第4話 敬語とタメ口
「はい」
返事をするとララが扉を開けて
「お昼のお食事が出来ましたよ」
と声をかけてきた。
お昼ご飯は親子どんぶりだった。母さんもよくお昼にこれを作ってくれた。将太はプールだし、お昼はララと二人きりだ。同年代の女の子と二人きりという事にドキドキするべきなのかもしれないが、ウトウトとしながら昔の母さんを思い出していた余韻からの懐かしい親子どんぶりで泣きたくすらなってきた。
暑い夏休み のお昼ご飯といえばテレビでよく聞くのは、そうめんだが僕にとっては親子どんぶりなのだ。
「お口に合って良かった」
僕の食べっぷりを見てララが微笑んだ。
ララは午後から掃除をしてから買い物に行くと言うので予定外に暇になった僕はスーパーを教えるためにも一緒に買い物に行く事にした。
すぐに車を呼びますので……とララはお抱えの運転手に連絡しようとした。
そういえば、家政婦紹介所を買い取っちゃったぐらいのトンデモのお嬢さまだったな。
近いし僕が荷物を持つからと、歩いてスーパーに行く事を説得する。
「すいません。一緒に来て頂いて。夏休みですし、お友達とお出かけになる予定あったんじゃないですか?」
「あ、友達とか居ないので……気にしないで下さい。それに花梨もこうやって外に出れて嬉しいと思うから」
花梨だけ置いていくわけにいかないのでベビーカーに乗せて連れてきた。
敬語じゃなくていいと言われたがララが敬語なのでつられてしまう。
「……わたくしが、こんな話し方をしているので普通には話しにくいですか?」
「まぁ、そうですね。ララさ……ララも普通に話して下さい」
「そうで……あ、そうだね。そうするです。ごめんです。わたくし日本語のゆるい話し方慣れてなくて」
ぷぷっ。笑っちゃ悪いと思いつつ笑ってしまう。
けれど、これが良かったみたいだ。僕が我慢出来ずに笑ってしまった事によってララも笑ってくれ、何となく楽に話せそうな雰囲気になった。
人との会話のタイミングを計りかねる僕でも話しやすくなったのは分かる。
「隆太、友達いないですか?」
わお、いきなり単刀直入だね。
「いないんだ。友達の作り方とか人と親しく会話していくにはどうしたらいいのか?とかね」
「隆太、まだ半日しか一緒にいないけれど、ごく普通の人。人に嫌われる人じゃないです。きっと隆太が原因じゃないです」
「ありがとう」
おっしゃ! 僕凄い。
実は、この“ありがとう”も心で思っているのにタイミングを逃して言えない事がたまにあるのだ。
多分、友達が出来ない原因の一つはこれだと思う。
思ってるだけじゃダメなのは分かっている。特にこういう“ありがとう”という言葉はタイミングがどうとか言ってないで言わなきゃいけないんだと思う。
けれど、よし! 言おうと思っているうちに他の話題に移ったりして言いづらくなってしまうのだ。ララは僕が原因じゃないと言って くれたが、僕は僕が原因だと思う。
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