第3話 母さん
今年の春に母さんが亡くなった。
父さんは毎日忙しく深夜帰り。
僕の下には、小学校三年生の弟と生まれて一年未満の妹がいる。
弟は自分の事は一人で一通り出来るが遊びたい盛りで、洗濯物もたたまないで遊びに行ってしまう。
妹は、まだ喋る事も出来ず夏休み期間中は、保育所にも預けないのでずっと僕が見ていないといけない。
そう思っていた。
けれど僕の負担を考えた父さんは家政婦さんを頼んでくれたのだ。
まさかその家政婦さんが僕のと同じ歳の女の子だとは思わなかったけど。
家事をしなくてよくなったので、何となく時間を持て余してしまう。
せっかくだから勉強で もしようと問題集を出したが何だか落ち着かない。
気晴らしにとベットで横になりマンガを読み始めた。
やっぱりララが気になって集中出来ないからかマンガの内容が入ってこないで、いつのまにかウトウトとしてしまった。
将太が生まれた頃からずっと母さんは専業主婦として家に居た。
人との接し方が分からない僕は学校で少し仲良く話した子と放課後に遊ぶ約束を取り付けるやり方が分からなくてタイミングを逃して、ほとんどの日を家で母さんと過ごしていた。
どのぐらい仲良くなったら“今日、僕のうち遊びにこない?” と言えるのだろう。
どのぐらい距離が縮まったなと感じたら“うちにこないか?” と誘ってもらえるのだろう。
そして“うちにこないか? ” と誘ってもらったら仲良し度合いに自信が無くても遊びに行ってしまっても、図々しい奴と思われない
だろうか。などと人付き合いというものの難しさに小学生の頃から悩んでいたものだった。
そんな僕を心配しているはずなのに母さんは、友達という事を僕に何もせっつかず見守ってくれた。そして、料理の仕方を教えてくれたり買い物に行って、食材の選び方などを教えてくれた。
母さんが亡くなって僕が何とか家事をこなせているのは、そうやって友達と遊べないでいる僕に母さんが家事を教えてくれていたからだったのだ。
僕がまだ小学校に入る前までは母さんは働きに出ていた。そういえば、ララのような和服にかっぽうぎを着たような格好を良くしていたような気がする。確か仕事先 の制服だったような。母さんも家政婦だったのかな? あ、でも家政婦さんがそんな格好ばかりするものでも無いか。旅館とか料亭とかそういうところで働いていたのかな……。
昔の母さんの事を思い出してウトウトしていたら、コンコンと部屋をノックする音が聞こえた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます