第2話 買い取りました(ニッコリ)

いやぁー、でも何か今、あっさりと

 とんでも無い事言わなかったか? ララさんは。


 家にシェフがいるとか、家政婦紹介所を買い取ったとか。

「あの、夏休みなんですか?」

いや、聞くとこそこじゃないだろう。ツッコミどころ満載なのに。


ただでさえ人との会話が苦手なのに、同年代の可愛らしい子を目の前にすると

何話していいか分からなくなる。


「はい。わたくし只今、高校一年生で十六歳です。実は、母は日本人なのですが父がアラブ人とのハーフでこの春までは海外の学校に行ってましたもので、まだ正式にはこちらの学校に編入してないのですが高校生です」


 アラブの方の人……もしかして石油王とか? だから家にシェフとか

 買い取るとか出来ちゃうのだろうか。

 どうなんだろう? 


 父さんが知らないオバさんが、とか言っていたから

 僕もてっきりオバさんが来るものだと思っていたが

 このララさん、このまま家政婦としてやってもらってもいいのかなぁ? 

 父さん仕事中で連絡つきにくいだろうしなぁ。


 まぁいいか、家事してもらうだけだし

 お代はいらないって言ってるんだしな。

 そうやって僕が自分の中で自己完結させた。


 僕は何を言ったらいいのだろう? 僕も自己紹介した方がいいのかな。

 と思い黙って立っていたら

「長男の隆太さんですね? わたくしと同じ高校一年生ですよね。よろしくお願いします」


と彼女は僕の事を分かっているようだった。

「よろしく ……お願いします」

「堅苦しくなさらないで。同級生に話すように話して下さい。名前もララって呼び捨てで構いませんから」


 そう言ってニッコリ笑ったララは思わず、見とれてしまうぐらいに可愛かった。

「それでは、わたくしは家事に入らせて頂きますね」

 ララはタスキを取り出して和服で動きやすいように縛り、かっぽうぎを着た。それだけでなく、編み込みでまとめてある髪の上にフワリとふきんをかぶって“昭和の昔のお母さん”のような姿になった。


 ララは家事だけでなく、ベビーシッターの講習も受けたらしい。

まだ一歳にも満たない妹の花梨を抱く姿や接し方を見ただけでそれがダテで無いのが分かるぐらいだった。


そんなララの完璧ぶりに僕は特にやる事も無くなり自分の部屋に戻る事にした。

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