お嬢さま家政婦

ピューレラ

第1話 初めまして

十時キッカリにチャイムが鳴った。

 何だか僕が緊張してるのか、ちょっとドキドキしている。

 多分、家政婦さんだろうと分かっているのでドアフォンに出ないで

  直接玄関の扉を開けた。


「初めまして。本日からこちらの家政婦をさせて頂きます村井ラエリオーラと申します。よろしくお願いします」

「……」

 言葉が出ない。固まってしまう。

 何かの間違いだろうとドアを閉めたくなる。

 ドアを開けた目の前には、僕とさほど歳の変わらなそうな美少女が立っていたのだ。

父さんの話ではオバちゃんだったはずなのに……。


 それもなんと、和服を着ている。

 暑く無いのだろうか。

 しかもラエ何とかさんって外国の方?

「あのぉ、お父様から聞いていませんか? わたくし、白猫家政婦紹介所から着ました。入っていいですか?」

「……どうぞ」

 家政婦というのが完全に信じきれたわけじゃなかったけれど

 拒む言葉も言えず、家に入れてしまった。

 こういうところが友達が 出来ない原因かもしれない。

 他の人ならここで

「若く見えますが、あなたいくつですか?」とか

「何かの間違いじゃないですか?」とか

 何か、即受け入れない拒みに繋がる言葉を言うだろう。

 それが、思い浮かんでも僕には言えないのだ。

 言う、タイミングが分からなくて……。



「あの、お台所はどこでしょうか? まずそこから教えて頂けますか?」

「はい」

 ここでもまた素直に答えてしまう。

 ダイニングキッチンに案内すると和服美少女さんは僕の前で

 かしこまっておじぎをした。


「改めて、挨拶させていただきますね。わたくし、村井ラエリオーラと申します。ララと呼んで下さって結構ですよ。本当は、玄関先で何か聞かれて入れてもらえないとか質 問を色々されるかなと思っていたのですが何もなくて拍子抜けしています。なので自分から話してしまいますね」

 そういうとララさんは更に喋りだした。

 僕は途中で何かを言う事も無く、ただ黙って聞いていた。


 わたくし、家事が大好きで将来はわたくしが尊敬するママさんのような素敵な良妻賢母になるのが夢なのです。そのために今までも色々な方から家事を教わってきたのですが

 その成果を発揮する場所が無かったのです。

 わたくしの家はシェフも家政婦もおりますし

 わたくしには包丁も握らせてくれません。

 ですので、このたび白猫家政婦紹介所を買い取りまして

 夏休みの間だけ、依頼があった家政婦派遣をわたくしがさせて頂く事で

 思い存分、家事をする事にしたのです。

 あ、お代は結構です。

 腕はそこそこだと自負しておりますが

 何分、本格的に一般家庭で家事をさせて頂くのは初めてですので。 

 そう一気に言うとララさんという美少女は、にっこりと微笑んだ。

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