第11話 被害者=大槻佳奈
「さあ、この部屋だよ」
交差点で会ったおばあちゃんに連れられて十五分。着いたのは……
「篤史先輩、ここって……」
「え? ……あ〜理成弦の管理している付属病院だ。という事は入院しているお孫さんはうちの生徒なんだろうね〜」
「……何でそう言い切れるんですか? 」
遊び相手の確保のために渋々着いて来た気だるそうな篤史にジト目を向けながら気づいた疑問を素直に質問する。
「この島にある高等学校以上の学校にはそれぞれの学校の生徒専用の病院が付いていてね。まあ昼間の模擬戦みたいに他と比べて危ない授業も多いしね」
「そうさね。うちの孫もあんたらと同じ学校の生徒でよ。今年入ったばかりの一年生なんだけどねえ」
"俺は一日生なんですけどね”なんていうツッコミは司の心の中に静かに仕舞われた。
おばあちゃんは一つの純白の扉の前で立ち止まり左手側についている鈍色に光る金属のとってに手をかけスライドする。
「カナちゃん。お見舞いに来ましたよ」
返事はない。
おばあちゃんの視線の向けられた先には片脚を白い包帯でぐるぐる巻きにされ、天井からそれを吊っている同い年くらいの少女が窓際のベットに横たわっていた。
「ごめんね。まだあの子目を覚まさないみたいで」
「この娘は……」
「篤史先輩? お知り合いですか? 」
「知り合いも何も彼女は君のクラスの大槻佳奈ちゃんだよ」
ーーちゃん付けってどうなんだ?ーー
「おやおや知り合いだったかい。佳奈はねえ今日の朝登校中に路地で襲われたみたいでね……あれだけ近道なんてするんじゃないと言ったのに……」
痛々しい孫の姿から目をそらすようにおばあちゃんは近くの花瓶に持って来たお見舞い用の花を活ける。
「何時もあんなに元気に教室ではしゃいでいたのに……君は可愛いからいつでも私が朝一緒に登校してあげようって言ったのに……」
「………………襲ったの先輩じゃないですよね? 」
「違うに決まってるじゃないか。私は健全で清潔な恋の仕方しか知らないよ」
なんてのたまいつつ篤史は佳奈の手を取り彼女の可憐で整った顔に意地の悪い笑みを浮かべながら近寄っていく。
「篤史先輩、それ以上は犯罪になるんですが……」
篤史の頭を鷲掴みにして何とか進行を食い止める。
「司くん。私だって流石にそんな事はしないよ」
「いえ、もう直感で分かります。貴方ならやりかねません」
「酷いこと言うねえ……彼女の顔をよく見たまえ」
そう言われて横たわっている佳奈の顔に目を落とす。
「普通の可愛い女の子だと思いますけど」
「だろう。そこがおかしいのだよ。なんで彼女は脚が骨折する程の力を加えらえているのに
それ以外の体の部位には全く損傷がないんだい? 」
「言われてみれば……脚に比べて手や顔には傷一つ付いていない」
「これはまた不可解な事件だね。彼女のためにも是非我々が調査しよう」
「そうですね……ッて僕もですかぁ? 」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます