第8話 異能力=Peace
何故か先に行った久我を追いかけるような形で司は食堂を出た。
「教室で体育とか……まさか保健体育のことじゃないだろうな? 」
一人でブツブツ呟きながらゆっくりと階段を上る。
教室に着くとまだ授業が始まるまでには五分ほどの余裕があるのにほとんど全員が席についていた。
自分の席に急いで戻り前に座っている久我の肩をつつく。
「まさかこれが『初めて』受ける授業ってわけじゃないよな? 」
「まあこれも確かに異様な光景だけどな。でも本番はここからだぜ」
「何だよ本番って? 」
そう聞き返した時、ふいに教室のドアが開き、なんと篤史が入ってきたではないか。
「篤史先輩⁈ 」
「お、司くんじゃじゃないか……という事はきみはこの授業は初めてだね」
「初めても何も体育の授業ですよね? 」
「いやいや、それが一味違うのだよ」
篤史は教壇に立つとホコンと咳払いをしおもむろに授業を始めた。
「えーと……それでは週に三回しかない実技体育の授業を始める。まずは端末に入っている『ピース』を開いてくれたまえ」
クラスメイトたちが一斉に各々の端末を手に取り画面をいじり始めた。
司も指示に従い自分の端末を開き『ピース』とやらを探す。
すると、画面の左端に『Peace』という表記のアプリを見つけた。
そのアプリをタップし開いてみる。
するとこの学校の校章をバックに文字が浮かび上がり、それを機械音が読み上げる。
ーーようこそ、peace へ。まずは貴方の指紋を照合致します。端末の電源ボタンに三秒間親指を押し当てて下さいーー
アプリの言う通りに端末の裏面にある電源ボタンに指を添える。
ーー照合完了。宮野司さまをアカウント登録致しましたーー
そう言うと画面から文字が消えいくつかの文字が四角に囲まれて画面に現れた。
「さあ、もうみんなログインが終わったみたいだね。司くんがいるから改めて説明するよ。このアプリ『Peace』は我々新世代が持つ能力を解放するためのものだ。そしてログインが終わってすぐの今のホーム画面に表示されているのが君達が使える能力だ。能力はC、B、B+、A、A+、Sの六段階に分かれている……まあ一般的にはSに近ずくほどレアな能力だと言われているが……」
篤史の説明を聞き終えないうちに司は端末に目を落とし、自分の能力を確認した。
[剣術 B] [遅延 B] [千里眼 A] [ロック ?]
「微妙……でいいのかなぁ? て言うかロックって何なんだ? 」
いまいち強さの基準が分からないまま篤史の話は進んでいく。
「この端末に入っている能力は端末を持っている間のみ効果を発揮する。この授業では
能力を使って対人の模擬戦闘をするから忘れると痛いことになるよ〜」
模擬戦闘なんてするのか……まあ確かに新世代ならそんなに大怪我はしないだろうしそれが自分の能力をどう使うかを決めるには丁度いいのかもな……なんて思っているとふと篤史と目があった。
「じゃあ今日は新入生の宮野司くんにエキシビションマッチでもやって貰おうかな。相手はえーと……司くんの隣に座っているそこの彼女、よろしく頼むよ」
篤史がビシッと指を指して言う。
「……分かりました」
と言うと吉野はその見る者を魅了する美しい銀髪をたなびかせゆっくりと立ち上がる。
「吉野さん、本当に模擬戦闘をするの? 」
「……これも授業だから……」
彼女は口数少なくそう告げると廊下に出て行った。
「さあ、みんなも校庭に出てくれ。新入生の実力をよく見ておこうではないか」
一人、また一人と席を立ち教室を出る。そんなクラスメイトの後に続き司も慣れない廊下で迷わないようその波に乗って校庭へと赴いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます