ゲームなんだよ人生は

タカテン

STAGE:1 幸せなゲーム脳

 先日、ふと立ち寄った街を散歩していたら、偶然にも素敵な光景に出くわした。


 住宅街の一角にある月極駐車場。ワゴン車と軽自動車が数台停まっている。

 それそのものはなんてことはない、ごくありきたりなもの。

 だけど、それらの車が作り出す影が、僕の脳裏を激しく刺激した。


「おおっ! まるでスーパーマリオの背景みたいじゃないかっ!」


 そう、ワゴン車と昨今の背の高い軽自動車が作り出した影が『スーパーマリオブラザーズ』の、にょきにょきと生えた山の背景にそっくりだったのだ。

 

 そう言えば子供の頃、建物の影をアクションゲームのステージに見立てて遊んでいたことを思い出す。

 辺りを見回す。

 誰もいない。

 これは久しぶりにやっちゃうか?

 Bダッシュかまして片手を上げて天高くジャンプ! 俺だけに見えるキノコを取って「ぐいんぐいんぐいん」とパワーアップしちゃおうか?


 ……さすがにやめておいた。誰も見ていないとはいえ、さすがにいい歳したおっさんが、そこまではっちゃけることは出来ない。

 建物の影で遊ぶのは小学生まで。

 右に曲がろうが、後退しようが常に前方を向いて移動するドラクエ1ごっこは中学生まで。

 向かってくる相手に肩をぶつけて「必殺半キャラずらし!」ってことを高校の先輩にやって、マジギレされたのも今となっては懐かしい想い出だ。

 

 こういうのを世間では『ゲーム脳』と呼ぶらしい。

 もっとも正確には『ゲーム脳』とは「ゲームをやっている時の脳は、認知症のそれと同じ状態になっている」という眉唾な仮説のことなのだが、まぁそれはともかく。


 とかくマイナスな方向で使われがちな『ゲーム脳』って言葉だけど、個人的にはそう悪いものじゃないかなと思っている。

 何故ならこうして普通なら見落としてしまうような光景にも、ゲーム脳のおかげで妙な感動を覚えてしまうんだから。


 ってことで、僕はおっさんと呼ばれる歳になっても、ゲームとゲーム脳で楽しく毎日を過ごしている。

 そんなおっさんの、ゲームにまつわるヘンテコエッセイ。果たしてどこまでネタが続くかは分からないけれど、どうぞお付き合いください。

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