第9話


何分くらい経ったのだろう。


先生の匂いに包まれた私は徐々に落ち着きを取り戻していた。


「落ち着いたか?」


先生の優しい声が近くで聞こえる。


あんなに大泣きして、私は恥ずかしくて顔を合わせられなかった。


「何があったのかゆっくりでいいから話してくれ」


「せんせ、脱がせて」


先生はもう驚かない。


「松木、それはできない。」


「私の名前は優だよ。ちゃんと呼んで。」


先生は何も話さない。


きっとここからどんなに甘えても口説いても先生の壁は崩れない。





だから私はキスをした。




暖かくて柔らかい感触と、すこし煙草の匂いがした。


「松木!!やめなさい!」


その大きな声と同時に噛み付くようなキスをした。



「まつ…き…」



「せんせえ、ごめんね」





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