かの記憶の欠片3


黒い星は影となり 黄金の島々を覆いつくす


風が吹き 海は荒れ


光を失った島々は崩れ始めた



国をつくりし兄弟たちは大慌て


影をどかさんと必死になった


長きに渡り磨かれてきた先人たちの知恵と術


全てを携え三度戦に挑むも影には敵わじ


虚しく島々は崩れ去る一方だった


これに気付いた他所の者たちは


陸に及ばなければと見ては見ぬ振り


そもそも自ずから招いたことだ



父が去り 残された兄弟たちは相談し


影をここではない異界へと飛ばし


二度と現れないよう封印することに決めた


しかし封印には礎が必要だ


誰か封印し続ける犠牲が必要だ


多くの兄弟たちは口をそろえてこう言った


末妹がなればいい



影を呼び込み戦いもせず


怯えて成り行きを見ていた末娘


兄弟たちの決め事に


泣いて嫌がるも逆らえず


見かねたすぐ上の兄弟は


妹の身代わりに名乗り出た


驚き反対する兄弟あれど


堅い絆で結ばれた二人の決意


誰も止めることが出来なかった


末娘は全てが恐ろしく


何も口を出せないでいた


成り行きが全て過ぎ去ることを


ただじっと待っていた



兄弟たちの手によって


黄金の島を覆っていた影は


異界の彼方へと追いやられた


光を取り戻し 黄金の島々は蘇る


やがて兄弟たちが去りし後


その子らたちの手によって


ゆっくり時を刻み始める


礎となった優しき二人の兄弟は


無間の彼方にて一柱の神となる


何もできなかった末娘


兄弟でただ一人だけ 


日ノ本の島々に取り残された


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る