かの記憶の欠片2


国をつくりし兄弟たちは二人で一人


対となる兄弟がいた


半身となる連れ合いがいた



兄弟の一番下の末娘


娘に連れ合いはいなかった


娘が目覚めたあくる日のこと


船の中の黒い箱の中で


喋ったことも無かった連れ合いは


一番大切だった兄弟は


冷たく硬くなっていた



次の日から娘は何もしなくなった


何もする気が起きなくなった


毎日ただただ泣いていた


来る日も来る日も泣いていた


他の兄弟が心配しても


娘はずっと泣いていた



どんなに泣いて悲しんでも


他の兄弟をうらやんでも


作られていく世界を憎んでも


大切な人は戻らない



あくる日眺めた空の上


黒い星が下りてきて


娘にそっと囁いた


おまえの心を映してやろう

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