????????の章 其ノ??
ガサガサッ
薄明るく暖かい……自分は何かの隣にいる。
何がどうなったのだろう?
ここは明らかに長い長い間、自分が居た場所では無い。
まるで下へ潰されてしまうかのような圧迫感。
気が付けば心地良いような苦しいような……不思議な空間に自分は居た。
ガサッガサッガサッガサッ
今までに感じたことの無い波長が感じられる。
それはどんどん近づいているようだ。
そしてその波長は暫くすると止まった。
『誰か居るの?』
(……ん……ここは? …私、どうなったの?)
気が付き目を開けると志乃は真っ暗な場所に居た。一瞬自分が何をしてここにいるのかわからなかった。目の前は何も見えない、夜だろうか? そう思い空を見上げると星の様な物が見えた。
だがおかしい、さっきまで昼だった筈だ。
もしかして夜までここで寝ていたのか?!
(……そうだ! 私は九尾の狐に背後から襲い掛かって……それから………)
それからはよくわからなかった。たしか錫杖で突こうとし、それを見破られて気がつけばここに居たのだ。トラと一緒に珠妃の尻尾へと吸い込まれるかのように…。
「トラ! どこにいるの?!」
必死に辺りを見回しトラを探す。
(一体ここはどこなの? ……夜なの?!)
立ち上がり歩き回ろうとして気が付いた。
なんと自分の足が地に付いている感覚が無いのだ!
(な……何なのここは?)
思わず足元を見るとやはり真っ暗である。
だが
地面に星…?
よくよく見渡すとうっすらと自分の周りに何か浮いている。だがそれが何かよくわからない。何かの道具のように見え、どこかで見たような気もするがそれが何なのかがわからない。
(少し息苦しい……でも不思議……とても落ち着く…)
今まで感じたことの無いような、懐かしいような、何とも言いようのない感覚を受けながら、状況を把握する為周りをよく
(暗くてよくわからないわね……あの空にあるのは本当に星?)
もう一度よく上を見上げる。
するとぷかぷかと何かが浮かんでいる中に見覚えのあるものが……。
「トラ!!」
それは猫の姿に戻ったトラであった。まるで死んでいるかの様に、他の物に混じって浮いていた。
志乃は地の無い空間を蹴ると宙を滑るかのようにふわりとトラの方向へ移動する。空を飛んていた時の感覚とはまるで違う。地面が無いせいか、引っ張られている感覚が無い。
トラのところまで着くと、ピタリと志乃の身体は止まった。
「しっかりして!」
トラを捕まえると揺り動かす。
まだ暖かく鼓動が聞こえる、よかった。
「………う…む…志乃……ここはどこだ? ……あれからどうなったのだ…?」
「トラ!…よかった! 分からないけど…変なところに来ちゃったみたいね」
志乃がそう言うと、突然トラは震えだした!
「……さ…寒い…苦しい…!……ワシらは地獄へ来てしまったのではないか?」
「しっかりして!」
着ていた上着を脱ぎ、トラを
「少なくとも地獄ではないみたいよ。鬼も三途の川も見当たらないし…。とりあえずはまだ生きてるんじゃない?」
「……生きた心地がせんわ……。こんなところに居たら本当に死んじまう…」
「そうなる前に帰る方法を探しましょ。もしかしたらイロハだってまだ九尾と戦ってるかも知れないし!」
トラを脇に抱え指で印をきった。
明かりを出して辺りを照らすのだ。
「閃光!…………あれ?」
……おかしい、いつもの光の珠が出ない!
何回か印をきったがやはり同じだった。
「術が使えない?!」
「……やはり駄目か…。わしもこの通りこの姿に戻ってしまっとる……。まるで気が分散しちまうような感じだ……」
「参ったわね。まず錫杖を探したいのに」
なす術はないのだろうか、出口はおろか錫杖すら探せないとは。そこらに浮いている
「明かり無しで探すしかなさそうね。何年掛かるか分からないけど……」
「その前に餓死するぞ…」
「これだけ色んな物浮いてるんだから食べれる物もあるかもしれないし…。とにかく弱気は駄目!こんな時だからこそ気を強く持たなきゃ!」
寒さに震えながらもトラは志乃の前向き振りに驚く。この状況で何故そんなに落ち着いていられるのか。何度も死線を歩いてきたトラでさえ信じられなかった。
シャン!!
「今の音!」
「…ん」
後ろの方で錫杖の鈴の音がしたのだ!
『探し物はこれか?』
振り返るとそこには錫杖を持った人間が居た!
何故かぼうっとその人間の周りだけ明るく、古めかしい着物を着ているのがよくわかった。よくわからない格好である。片手に帳面の様な物を持ち、腰には瓢箪をぶら下げている。
「そ、それよそれ!…って誰なの?」
『我か? 我は
そう言うと比紗瑚はすすーっと志乃の方へ寄り、くるくると志乃の周りを回って色んな角度から眺めた。
「な、何?」
『ふむー……変わった所は無いが、おかしな奴だなお前は。人間か?』
「どう見ても人間でしょ! 私は志乃! 神社の巫女!」
『ジンジャノミコ? ミコとは何だ? 小脇に抱えてるのは猫という奴だろう? ミコとは猫の類なのか?』
「はぁ? 巫女は人間でしょ! こっちのはトラ! 猫!」
『ふむ…そっちの虎は何やら苦しそうだな』
「ぎゃっ」
「何したの?!」
『苦しそうなので掛けてやった。これで苦しくなかろう』
「…ぐ………む…?……ら…楽になった…」
死んだ様にじっとしていたトラが、上着の中でごそごそ動き出した。
『ところでシノよ、何故お前はこの状況で平然としていられる? 人間にしろ他の生き物にしろ、この『無間界』に入ってきたら、慌て、理解に苦しみ、発狂する者も居る。只でさえ生ある者にとっては居心地が悪いからな』
「無間界? この場所の名前?」
『
「…な、なによそれ」
『わからんものはわからん。無間界という名も我が勝手につけた。ここに行き着いた事情は知らんが、好き好んで来た訳ではなかろう? 何故そんな状況で冷静に行動しようとできるのか? この前ここに来た者はわんわん泣いておった』
「……そう言えば志乃、お主は息苦しくないのか? 寒くないのか? ワシでさえ震えがくるほど寒かったというのに」
「……何ていうか…確かに少し息苦しいけど、居心地はそんなに悪くないかなぁ………ってそれは置いといて、貴方ここから出る方法知ってるんでしょ? すぐ帰らないといけないの! 出口は何処?!」
すると比紗瑚は少し驚いた表情をする。
『何故そう思う?』
「さっき『この前ここに来た奴』って言ったじゃない。私たちの他に誰も居ないし、うまいこと帰してあげたんでしょ?」
それを聞き比紗瑚は意地悪っぽく笑うと、傍にあった我楽多を指差す。
『そんなことは分からんではないか。もしかしたら、そやつはここで生き絶え、あのガラクタに姿を変えたかも知れんぞ?』
「何だと?!」
『……まぁ、このくらいにしてやるかな。余り度が過ぎても面白くないからな。その通り! ここに流れ着いた生ある者は元の世界に帰しておる』
(……ほっ)
「おぉ!?」
悪ふざけされた怒りより喜びが勝る二人。
不意に比紗瑚は志乃の錫杖を大きく振った!
シャラ!
すると右手の方の空間が光り、何かが
星ノ巫女 白面九尾の復活 中章 下章へと続く
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