人攫い事変の章 其ノニ
一方、問題の集落は神社から北に離れた場所にある。いつもは神社とは対照的で
志乃は
「まだ人攫いは現れてないようね」
「それっぽい感じないな。小さい気配はあるみてぇだきと」
「ここに居る人間は皆、妖怪への恐れと不安でいっぱいだからね。弱い心に付け込んで寄って来る妖怪も少なくないのよ」
さて、どこで妖怪を待ち伏せるか? 一軒一軒、妖怪が攫いそうな子供のいる家を訪ねて歩くわけにもいくまい。
結局、村の中心で
村の大人たちは夜更けに童女二人が歩いてくるを見て
そんなこと知らない集落の大人は志乃たちに甘酒を振舞う。驚いたイロハだが、暖かい
「うんめぇ! 初めて飲んだ!」
甘酒を初めて飲んだと喜ぶ奇妙な童女に大人たちは驚き、どっと吹き出した。
険しかった一同の表情に少しだけ安堵が戻る。
だがそれも束の間に過ぎなかった。
『出たぞ──!!! 化け
それを聞くや否や、皆とっさに松明やクワを手に走り出す。
『どっちだ!?』
『
「私らも行くわよ!」
「ぶへっ! 全部飲んでないのに!」
「退治すればいくらでも飲めるわよ!」
あぜ道を走りぬけ、林を過ぎると大きな
二本の足で子供を掴み、今にも飛び出さんとしている!
子供はぐったりしていて声すら上げない、果たして無事か?
『なんだありゃ! 鳥け!?』
『こん畜生! どっから入り込んだ!?』
『オラゲの子だぁ!! 誰か助けてくんろぉー!!!』
恐れおののく里人に代わり、勇ましげな集団が前に出た。近隣の寺社から集まった「
『
「ダメ! 子供に当たる!」
志乃の声は届かない。一斉に化け物目掛けて矢が射られた!
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