第9話先人の残した戒めを検証してみる⑤

9.ワトスン役の登場人物は自分の判断を全て読者に知らせねばならない。


 これは、推理小説を読むにあたって、推理する楽しさを味わってもらいたいという部分からきているのではないかと思います。

 読者が自己投影しやすいワトスン役に謎を解くための手伝いをしてもらい、そしてワトスン役の思っている事をヒントとして提示して推理小説の謎を解くという醍醐味を味わう。推理小説の見本のような展開です。


 ですが、近年をみると、やはりそれを逆手にとって読者を驚かす手法が多く見られます。ワトスン役と云って良いか解りませんが、一人称で「私はこう思い、こう考えた」というミスリードで読者を騙し、どんでん返しを仕込む手法も数多く見られます。なので戒めとまではいかないと思いますが(推理小説で読者を楽しませるにあたっては、ワトスン役の登場人物は自分の判断を全て読者に知らせるべきである)位にしておいた方が現代に於いては良いと思いました。




10.双子などの一人二役は予め読者に知らされねばならない。



 これはどうなのだろう? これを読者に知らせてしまったら、このトリックは使えないという事になってしまいます。双子のトリックはずるいから使うな。という戒めのように感じないでもないですが、使いようでいくらでも面白い物が書けそうな気もします。だたこれだけしかトリックが無い場合は答えを知った時に残念に思うかもしれません。戒めまではいかないと思いますが、注意して使うべきだとも思います。


 さて、これにてノックスさんの十戒の検証は終わりです。ですが私として認識違いをしていた部分を発見したのでここで訂正というか補足をしておきたいと思います。


 5.中国人を登場させてはならない。の部分なのですが、証言が当てにならないという風に捉えてしまっていましたが、どうやら違うようで、雑技団のような関節を外して通れない所を通ったり、火を噴いたり出来る、万能の怪人、超人のように、中国人を捉えていたようです。

つまりは超能力者のような存在を登場させてはならないという事のようでした。となると超自然現象の項目と被るような気がしないでもありませんが、兎に角超能力者を登場させてはならないと同義のようです。


 いやいや、中々複雑です。しばらく間を置いてから今度はヴァン・ダインの二十則を検証してみたいと思います。ただこの検証は始めると終わるまでに時間が掛かりそうなので、その前に他の項目を何点か書いてからにしますね。

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