第6話先人の残した戒めを検証してみる②

3.犯行現場に秘密の抜け穴・通路が二つ以上あってはならない。


  またまた難しい戒めです。まず意味が解りにくい。文章の意味を分析すると、秘密の通路や秘密の通路が2つはあっても良いけれど、3つ4つとあってはいけないというように読めます。えっ、秘密の通路が2つもあって良いのか? と疑問に思ってしまいます。そもそもこの項目は密室云々に関わる部分から生じている戒めなのではないかと思うのですが、秘密の通路は二つどころか一つでも駄目だと思います。


 新本格ミステリーの建物の構造を当てるミステリーでさえ、秘密の通路は大体一つです。まれに二つあるのも見たことがあるような気がしますが、それが真相に直結している場合は、それってアリなの? といった疑問符が幾つも頭に浮かんでしまいます。この年代に書かれたミステリーにおける戒めなら、犯行現場に秘密の抜け穴・通路があってはならない。のではないかと思う位です。


 現代のミステリーシーンを考えるにあたっては、犯行現場に秘密の抜け穴・通路があってはならない。あっても上手く偽装されていてその抜け穴自体を推理出来て、且つ見破れるだけのヒントを提示していなければならない。そんな感じなら納得できる気がします。なのでこの戒めは意味不明と思わざるを得ないです。



4.未発見の毒薬や難解な科学的説明を必要とする機械を犯行に用いてはならなない。


 いい戒めですね。まず、前半の未発見の毒薬に関しては、例えば飲んで嘔吐も下痢もせずに三日位してから死んでしまう毒薬なんて使われたら、アリバイなんてあってないようなものになってしまいます。また毒殺だと断定出来ないような毒が使われたら、病気による突然死なのか毒を盛られたのか判断がつかなくなります。つまり推理できる要素が必要なので、未発見の毒を使ってはいけないと云っているものだと思われます。


 また、難解な科学的説明を必要とする機械を犯行に用いてはならなない。という後半の部分も、この戒めが書かれた時代から想定するに、ロボットなどが殺人を犯したとかは不合理だと云いたいのではないかと思います。



 だた、この部分に関しては時代は変わり、ミステリー小説の世界も変わり、東野圭吾氏のガリレオシリーズのように、そういった物理や科学を背景に全く新しい発想の殺人を提示してそれを読み解くスタイルの物が登場しました。未発見の毒に関しては使い方はまだ難しいと思いますが、毒の使い方に関しては簡単には溶けないカプセルに封じられた毒薬などを仕込む事が出来る時代背景にもなりました。時代は物凄い速さで移り変わってきてしまっています。なので現代においては、未発見の毒薬や難解な科学的説明を必要とする機械を犯行に用いてはならなない。という部分は最早タブーではなく、その毒や機械に関して解りやすく説明をして、その上でちゃんと推理出来る要素を文中に含ませておけば良いと思うのです。

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