第5話先人の残した戒めを検証してみる①
● 推理小説及び本格ミステリーを書くにあたって、先人達の書き残したルールや戒めを知っておく必要があると個人的には考えます。現代の世の中で、それが適切なのか、本当に破ってはいけない物なのかというのを検証する必要もあるかと……。
正直に云いますと、個人的には破っても良いのではないかと思います。だってもう時代が随分違うのですから、いつまでも古いルールに従っていたら革新は起せませんし、変化しなければ飽きられてしまう恐れもあるのではないかと思います。ただ、重要なのはその古いしきたりやルール、戒めを知らずに破るのと、知っていて敢えて破るのでは、随分赴きが違ってくるのではないかと思います。また、破って良いモノと破ってはいけないモノの見極めも必要ではないかと思います。これをやぶったら最早ミステリー、いえ推理小説とは呼べない。となると破るべきではないと思いますので注意が必要です。
では今回はノックスの十戒に関して検証をしてみたいと思います。
まず、こういうルールとかを書くのはミステリー作家さんが基本的には多く、ヴァン・ダイン氏とかジョン・ディクスン・カー氏とか江戸川乱歩氏などが書いています。当然今回のロナルド・ノックス氏も神学者という経歴もありますが、推理小説家としての経歴を持っています。日本では余りその著作は有名ではありませんが、陸橋殺人事件とかを書いています。
ノックスの十戒 1928年著 (下記の数字の部分は引用です)
1.犯人は物語の最初に登場していなければならない。
初っ端から、どうしたものかと思うような戒めです。書かれたのが1928年ですから第一次世界大戦後で第二次世界大戦の前になります。随分前です。なので世相なんかも今とは違うでしょうから固定観念も違う事でしょう。ただこの十戒を自身で破っている作品もあるようで、真面目に受け止めない方が良いという見解もあります。まあノックスさんが自身で固定概念を植えつけておいてそれを破るという心理トリックの類を仕掛けていたとも考えられます。
そんな上で、犯人は物語の最初に登場していなければならない。という項目は過去においても現代においても戒めでもなんでもないと考えるべきではないかと思います。ざらにありますし、ほぼ意味の無い戒めだと思います。
2.探偵方法に超自然能力を用いてはならない。
これは、二十年位前までは普通に通じるタブーだったと思います。この超自然能力というのは今一抽象的で何を指しているのか解らない場合もありますので調べて見た所、超能力と同意のようです。つまり透視や念動力やテレパシーなどを差す訳です。単純に考えた場合、超能力を使って事件を解決するのは全てを台無しにしてしまいます。だって犯人の心をテレパシーで読んだら、推理の必要なんかなく犯人逮捕に至ってしまいます。犯人が頭の中で必死に夕飯に食べたい物を想像し続けても、質問されたら少しは浮かんでしまいます。それにそうしたら推理小説や本格ミステリーの意味が無くなってしまいます。なので基本的にはタブーだと考えます。
ですが昨今超能力探偵っぽいのがちらほら出てきています。ただ、少し読んだ感想を上げると、直接事件解決に超能力は使っていない。若しくは主人公はワトソン役で、超能力者且つホームズ役はその超能力をどう使ったのか、どう使えるのか、を条件として提示した上で、読者に推理させているように思えます。京極夏彦氏の京極堂シリーズにおける榎木津礼二郎なども、人の心が見えるという能力を持ちながら、ほぼ事件の真相は語らないといったスタンスを取っています。まあ、誰がやったかは特定出来ても、どうやったかまでは見えない場合もありますからね。証拠も必要になってきますし……。つまり超能力は持ちつつ(探偵方法に超自然能力を用いてはいない)ケースが多いのではないかと思います。そして先にも書きましたが、条件として超能力者であると提示しておいて、その上でどう推理するのかという使い方をしていると……。
それでは今度は魔法の使える世界での推理小説というものに少し触れてみたいと思います。魔法の使える世界。若しくはファンタジーの世界での推理小説。新しいジャンルですよね。ただ魔法も超能力もほぼ同義だとみて良いと思いますので、その使い方が重要になってくると思います。
実は私は一番最初にミステリーを書いたのが魔法の使える世界の推理小説みたいなモノでした。細かな所は忘れてしまいましたが、確か、サイコキネシスみたいに物を動かす事が出来る魔法を使える人とパイロキネシスみたいな火を付ける魔法が使える人とか登場させて、そんな中でファイナルファンタジーに出てくるような飛行旅客艇の中で殺人事件が起こるとかいう感じでした。物を動かす魔法は動かせるんですけど、物は見えていないと動かせないという条件を付けて、鍵を開けることなどは出来ないみたいな感じにしていたのです。一応ベランダ側も鍵が掛かっているのですが、鍵の部分は死角で見えないのです。
一応、結論としては、隣の部屋に忍び込んで、ベランダ側から部屋の内部に予め用意していた鏡を使って、鍵の部分を見つつ魔法で鍵を開けて進入、退出後に鍵を閉じ、使った鏡は魔法で倒して見えなくしておくみたいな感じにしました。結構チープなトリックですよね。まあ私の黒歴史は置いておいて、魔法や超能力は条件として提示した上で使えば新しい物が書けるのではないかと思います。
なので超自然能力や魔法は使いようなのではないかと思います。探偵方法においても殺害方法においてもです。今後は超能力や魔法が出てくる名作ミステリーも生まれてくるのではないかと期待しています。
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