第2話叙述トリックについて
2000年頃からシックスセンスや、十角館などの叙述トリック物が増えてきましたが、このトリックは基本的には作者が読者に対して仕掛けるトリックになります。通常のトリックは犯人が捜査の手を撹乱するする為に仕掛けるものなのですが、叙述トリックは趣が違います。
男だと思っていたら女だったとか、子供だと思っていたら大人だったとか、ただ映像として出してしまうと丸解りな場合も多く、昔では叙述トリックは邪道とされていた経緯もあります。ただ面白い手法なので上手く活用出来ると良いのではないかと思います。
それでなのですが、叙述トリックを書くのはかなり難しいのではないかという印象を受けられる方も結構多いのではないかと思います。私も実の所最初はそうでした。
そんな叙述トリックの根本的な書き方としては、まず先に、答えを用意しておき、その答えに向けて小説を書いていき、最後の段になった際その答えを明かすというのが筋になっています。ただこれを頭から書いていくと、結構難儀で、神経をすり減らす事になりかねません。
なので私的に叙述トリックを仕込む際は一度小説を書いてから、改造を加えていく方式を取ります。例えば、最初に犯人を男として書いていった後で最後に女に摩り替えていく方式を取るのです。書いている本人も男として書いているので、さり気無い形でミスリードが成立するのです。書き加える描写や削らないといけない部分も出てくるとは思いますがその方が簡単に書けると思います。
男だと思ったら女だったとか、大人だと思ったら赤ちゃんだったとか、五郎という登場人物の他に五郎という名前の犬がいて、殺害時間に五郎は主人公と一緒に居たという描写を加えるとかで、アリバイがあると誤認させる手法など、やり方は色々あります。やり方しだいでは色々な叙述トリックを仕掛ける事が出来ると思います。
ただ個人的には叙述トリックのみしかトリックが無い場合は掌編や短編小説位の長さにしておいた方が良いような気がします。長編を長々と読んでいった先で、ひっくり返った場合、騙されたと言ってくれる人もいるでしょうが、今まで読んできたのはなんだったんだよ、と、少し憤る人もいるかもしれません。お話として面白く、その叙述トリックが効果的に働いていれば問題無いのですが、それまでの文章に無駄が多いようなら、削って掌編や短編に纏め上げる方が無難なのではないかと思います。
個人的には長編で叙述トリックを仕込む場合には、他のトリックと絡め、複数あるトリックの一つとして使うと効果的なのではないかと考えます。解答編で他のトリックを暴く際に、同時にその叙述トリックを暴き、読者も警察もその他の登場人物も一緒に唸らせるような叙述トリックが美しいのではと、個人的には思うのです。
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