一月一一日

 大事故発生。サバンナ地方にヘリコプターが墜落し、無線機が故障、衛星電話もサンドスターが悪さをしてるのか使用不能。本部との連絡手段が断たれた格好。向こうからすれば「消息を絶った」ことになる。衛星写真でいずれ状況が伝わることを願う。そして本部が捜索隊を出してくれるのを期待するしかない。

 パークに遺る施設——たとえばジャパリ図書館や電気・水道等のインフラ設備にたどり着ければまだ通信手段が残っているかもしれないが、今のところ、そこへたどり着ける目処すら立たない。

 ヘリコプターは横に倒れるような形で着地したようで、バラバラになった回転翼が周囲に散乱していた。フロントガラスに、石のようなものが突き抜けた穴がいくつも開いている。おそらく火山の噴火によりサンドスターが操縦席に飛び込んだものと考えられる。これが墜落の原因だろう。でも操縦していた私は墜落時の状況を覚えていない。おそらくサンドスターは最初私に直撃し、パイロットの私が気絶したのを見てサブパイロットの大石くんが懸命に着陸を試みたものの、上手く行かなかったのだろう。その後、彼にもサンドスターが直撃したのは間違いないが、それがまだ飛行中だったのか墜落後だったのかは不明だ。

 なぜ二人にサンドスターが当たったと確信してるのかといえば、私も大石くんも身体に変化を生じているからだ。この外見は‥‥まるで子供だ。青と緑の中間のような髪の色(どことなくカコさんの髪を思い出させる)に、赤い服に白い半ズボン。服とズボンは何故か私たちの着ていたサファリシャツとサファリパンツの中に重ね着している感じ。こんなのわざわざ重ねる必要もないのに。私たちがサンドスターでフレンズ化したとすれば、この赤い服と白い半ズボンがヒトのフレンズの「皮」ということになるのだろう。なお私の「皮」は脱げた。大石くんのは脱げなかった。不思議。仕方ないので、大石くんのサファリシャツとかは持ち歩くことにして、「皮」が脱げるようになるまでその格好でいてもらうことにした。

 私も大石くんもまるっきり同じ姿だが、二人の違いは記憶の有無だ。私は墜落時以外の記憶がはっきりしてるのに対して(こうして日記の文章を書けている)、大石くんは何も覚えていない。墜落時のショックによる記憶喪失だろうか。

 フレンズ化はしたけれども、あれほどの事故で二人とも生きていること自体が奇跡に思える上に、サンドスターがヘリコプターに当たっていながらセルリアン化しなかったことも不幸中の幸いだった。二人とも長いこと気絶していたようなので、フレンズ化していたこともあり、ヘリコプターがセルリアン化していたなら格好の餌食となったのは間違いない。

 私たちはヘリコプターに積んであったサバイバルキットを携行し、まずはジャパリ図書館を目指して移動することにした。本部の連絡手段を探すにしろ、ジャパリパークから脱出する方法を見つけるにしろ、コノハ博士ならきっと力になってくれる。他のフレンズとも出会えて手を貸してくれればありがたいけれど‥‥。

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