一月一八日

 サバンナ地方を通り抜け、ジャングル地方へと入った。先のサバンナ地方はサーバルが棲んでいたところだ。結局、彼女と会うことは出来なかった。元気でいるだろうか。あれだけの年月が経ってるから、もしかしたらもう‥‥。

 移動手段は今のところは自分たちの二本足しか無い。なので、サバンナ地方をゆっくり移動してきた。ついついあちこちに隠れているフレンズに見とれてしまった。

 水場でも、フレンズはたくさんいたがサーバルはいない。水を飲んでいたトムソンガゼルに話しかけたところ、一年前まではサバンナ地方にサーバルが棲んでいたらしい。ただ、ドジで弱くてトラブルメーカーという話なので、私が知ってるサーバルとは別の子かも‥‥。そういえばカバも最近見ないねと言っていた。旅行かな、と。

 ジャングル地方へと繋がるサバンナ地方の出口で、ジャパリパークがまだ観光客を迎え入れていた時代の名残である案内看板が残っていた。だいぶ古びてはいたけれど‥‥。しかしクリアケースに入っていた地図は無くなっている。フレンズが取り出した?


 さて、ジャングル地方だ。ここに入ったところで一体のラッキービーストと遭遇した。フレンズ化してしまっている私たちをヒトと認識し、「初めまして」とパークの案内を始めた。いや結構。その案内はね、元パークガイドの私がラッキービーストに教えてあげたの。

 当初私と大石くんの二人だけで移動するつもりが、思いがけず道連れができてしまった。ラッキービーストは私たちの分のジャパリまんを運んでくるようになった。ちょうどサバイバルキットの食糧が尽きたところだったので助かった。ジャパリパークで餓死するなんて冗談にもならないものね。ジャパリまんの味は二〇年前より美味しく感じた。

 ところでジャパリまんが今食べられるということは、ヒトがいなくなったのにまだ工場が動いている証拠。ジャングル地方でところどころに遺る照明器具がまだ点灯していたりもして、電気が今もなお通っていることと必要最小限の電気設備のメンテナンスが誰かの手で実行されていることは判る。ここまで来ると、ジャパリパークの現状に私の理解が及ばない。誰がこれだけの設備を維持しているというの? フレンズの生態に想像以上の変化が起こっているのかも知れない。

 サバンナ地方ではもともとあった草木をつかって生活するフレンズが多いのに対して、ジャングル地方では自らの手で巣を作るフレンズが多い。このこと自体は私たちがパークにいたときから見られた傾向だけれど、今ここまで巣を見かける頻度が高いとなると、巣を作ることが動物の本能としてでなくフレンズの文化として拡がっている可能性を感じる。作り方を真似るとかして、他の種から学ぶことも出来ている‥‥?

 川にかけられた簡易な橋を発見。手元の地図と見比べると、私たちがいた頃にはアンイン橋があったところのよう。しかし今あるのは、どう考えてもその時に作られたものではない。一度壊れた橋の残骸を使って橋をかけなおした‥‥? フレンズが?

 川で首を捻っているところにジャガーが泳いで現われた。なぜか彼女に「カバ」と呼ばれる。「がばん」だったかしら? 「この橋をかけたのはカバさん、あなたじゃないの」みたいなことを言われたが、意味がわからない。

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