第二話 そして異なる世界へ
あの場では断われずに、
てっきり交換留学だから費用は学校持ちかと思っていたが、授業料については無料であるが、寮の費用や生活費は自分持ちであったのだ。よくよく考えれば当たり前の話で何とも馬鹿な奴だと思うのだが、当時の僕はちょっとどころではなく浮かれていたのであろう。ともかく、費用の為に日払いの単発アルバイトを行い、必死になって費用を稼いだ。
そして3月、僕は他県の大学へ通う友達の所へ逃亡した。
留学の費用が不足していたこと、このまま僕が通う大学近辺にいると気まずかったこと、そして何よりも、言葉の通じない中国という場所に行くという恐怖が日に日に募っていき、当時の僕は中国へ留学なんて、ごめんちゃいちゃいちゃいにーずという気持ちであった。
そして友達の所へ居候しながら言い訳程度に、日雇いの単発アルバイトを行い、2か月が過ぎたころ、祖母が大往生をしたという知らせと、教授から電話が入ったとの旨を伝えられ実家へ数年ぶりに帰郷した。
実家へ帰る船の中で、ともかく教授にはうまい言い訳をせねばと、できない演技を練習し、電話をかけてこっぴどく叱られ、何の根拠もなく6月某日に行きますと言ってしまい、自分で退路をふさいだ。今にして思えばあの時に諦めなくてよかったという想いであり、そして3月にきちんと行けていればという後悔、必死に交換留学生枠を取ってくれ・そして空港から留学先の大学まで迷わないように手配して頂いていた教授への申し訳ない気持ちも未だに沸き上がってくる。
そして実家に帰り、葬式が終わり、もう既に社会人であった兄が、勉強の為ならとお金を貸してくれると言ってくれた時には、兄の優しさに泣き、感謝した。また、不謹慎であるが、大往生した祖母が縁をつないでくれたと感謝もした。こうしてついに僕は、留学へ行く準備が整ったのである。
そして6月、僕は逃げることなく飛行機に乗った。搭乗前に教授へ行く
修学旅行以来の三度目の飛行機から見える景色の美しさに目を奪われ、そしてこれから行く中国に想いを
確か、外国人入境卡と表記されており、何だこれと思いつつ、とにかく旅行ガイドブックをめくって該当ある場所を探して、出入国カードと知り、苦労しながら書いた。事前に予習をしていれば、あらゆるトラブルは避けれていたのであるが、行き当たりばったりの旅も楽しいだろうと僕は思っていた。そのおかげで、誰もしないような体験を多く経験したと、今となっては自分の馬鹿さも役に立ったのではないかと思う。
そんなこんなもあって
そしてここから、語学力ゼロである僕の、楽しい留学が始まった。
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