第3話

 前世占いとかよくあるが、あれはあまり当たらない。

 なぜそんなことを言い切れるかというと、俺自身前世の記憶があるからだ。

 小さいころはみんな前世のことを覚えてるものだと思ってた。でも友達や親に話してもまったく信じてもらえず、友達にはうそつき呼ばわりされた。

 それから誰にも話したことはない。

 誰に信じてもらえなくても、が覚えていなくても、俺は覚えている。それでいいと最近思えるようになった。


 マスターの話したお話はまさに俺の前世の話だった。なぜマスターは知っているのか。いや、きっとよくある物話なのだろう。

 携帯電話が鳴った。

 見るとからのメールだ。

 メールを見ていた俺の顔が嬉しそうだったのだろう、マスターがにこにこしながら聞いてきた。

「何か嬉しいことがあったのですか」

 人に話すのは気恥ずかしいが正直に言うことにした。

「これから母とクラシックコンサートに行くんです。俺自身は音楽はよくわからないんですけど、母はピアノをやっているのでたまには親孝行しようと思って」

「そうですか。ちょうどお話もおわりました。どうぞ楽しんできてください」

「ありがとうございます。お話おもしろかったです。コーヒーも美味しかったです」

待ち合わせ場所に向かうべく席を立つ。

客のいない喫茶店だからちょっと不安だったけれどコーヒーはほんとに美味しかった。

母さんもコーヒー好きだし今度連れてきてみようかななんて考えていたからマスターの「ありがとうございました」の後に続いた言葉は聞いていなかった。


「どうぞ今を楽しく生きてください」

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死神 樹雨 @arbo-pluvo

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