第6話【温もりを求めて僕は狼狽】
幼い頃の母との記憶は
どんなに頭が千切れるほど頑張って
思い出したとしても
幸せな事は一つも思い出せない。
思い出す事と言えば
幸せそうに酒に潰れた母の寝顔だけ。
学生時代からの親友が経営している飲み屋で働く母は、学校から帰った僕を横目で見るやいなや三面鏡に向かい慌ただしく化粧を始める
『お腹空いたら、それチンして食べなさい』
そう言うと机の上に置かれた
コンビニ弁当を指さす母
弁当の下には千円札が挟まっていた。
僕は無言で弁当をレンジの中にいれた。
『あーーそれ食べたら、洗濯と部屋の片付けもしといてね、お母さん当分、帰って来ないからさぁ、何かあったらそのお金使って』
そう言いながらお気に入りの
香水を体中に染み込ませ
パタパタと玄関に向かう
僕は無言でレンジのレバーを回す
レンジのブォンと言う音が部屋中に響きわたる
母は玄関から僕の姿を確認すると
軽く微笑みこう言った
『もし私が帰ってきて汚たないままだったら今度こそ殺すからね』
そう言うと母は
自由を求めて飛び立つ鳥の様に部屋から出ていった
------バタン
僕は何も言わずにソレを見送ると
熱々に温まった弁当に口をつけた
「……あっつ」
凄く熱かった、凄く痛かった。
でも、寂しさで冷えきった
僕の心を温めたるには丁度良い温度だった。
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