第47話 会長、闇の思考
会議室。
ギルは座って、下を向いていた。向かい合って座るのはアレン、シャルロット、エルザの三人。
「すまなかった」
アレンたちが拠点へ戻ってきたあと、ギルは会議室にいた。そして開口一番謝った。もちろんそれだけで済むわけがない。アレンを危険な山に放置し、凶悪な魔物を使って殺そうとしたのだから。
「どうしてこんなことを?」
説明を求めるアレン。そこから口を閉ざすギル。
「本部にいる管理部長のゴーザじゃないの?」
シャルロットは切り出した。しかしギルは下を向いたまま、喋る様子はない。
「私に命令したのも、ゴーザからの命令があったからなんでしょ?」
「・・・・・・いや。俺の独断だ」
「うそよ。絶対」
部屋内にシャルロットの厳しい口調が響く。
本当にそうなのだろうか? しかしそれを問いつめても答えは出なさそうだ。なにか証拠があればいいのだが。
しばらく無言のときが流れた。それを破ったのはノックの音。入ってきたのは事務の女性だ。
「ギルさん。本部からトーカーが来てます」
「わ、わかったすぐ行く」
ギルは慌てたように席を立つ。それに反応してエルザは素早く立ち上がった。アレンも、シャルロットもそのトーカーの相手が怪しいことを瞬時に理解し、それに続く。
ギルは会議室を出て、事務所に急行。そのトーカーの受信機を取る前に、エルザが代わりにとった。
「あっ」
ギルの戸惑う声を無視し、エルザは声の主を聞こうと受信機を耳にあてる。
「どうだ? うまくやったか?」
その声は、すぐに思い出すことはできなかった。無言でいると向こうから反応がある。
「どうした? アレンの処理は終わったのか?」
「ゴーザ?」
エルザは思い出したのか、その名を口にした。
「だ、誰だ!?」
「私に代わって」
受信機はシャルロットに渡る。
「やっぱりあんたなのね。黒幕は」
「くっ・・・・・・」
プツッ。
「もしもし? 切りやがったわ。あいつ」
応答がなくなった受信機をトーカーに戻した。
「さて。理由を聞かせてもらいましょうか?」
シャルロットはギルのほうを向いた。彼は観念したように、がっくりと肩を落とした。
***
「ばれた?」
「は、はい」
ゴーザは会長の部屋に立っていた。ソファーでくつろぐラスゴルに対し、ゴーザの表情に焦りの色が見える。ガラス越しに見える外はすっかり暗くなっている。
「バカ者がっ」
「も、申し訳ございません」
「それで、奴らはここに来るのか?」
「はい。明日向かってくるとのことです」
会長はグラスを置いた。少しの間、考える素振りを見せる。その間、失態を犯したゴーザはハンカチで額に浮かぶ汗を拭っていた。
「もうよい。わしが話をつけよう」
「は、はい。それで、私のほうは・・・・・・」
「お前の処分は後日伝える。悪いようにはせん」
「はい。申し訳ございません」
ゴーザは出て行く。
どこまでも使えない男だ。遠くの支部に行ってもらい、事務仕事でも任せてやるか。単純作業ぐらいならできるだろう。
「それにしても・・・・・・」
アレンという男。なかなかにしぶとい。どう処理するか。
「まあ、わしにかかれば誰であろうと問題はない」
例えばの話、あおって怒らせ、罵倒してきたところをわしの権限で辞めさせることができる。辞めなければ今度こそ確実に息の根を止めるための計画を考えるだけ。
会長の脳内には、どす黒いものが渦巻いていた。
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