第42話 新たな発見

 エルザの部屋から相部屋に戻った。先輩魔法士が二段ベッドの上に仰向けに寝転がっていた。


「お疲れさまです」

「おおっ。お疲れさま」


 無精ひげを生やした背の高い男だ。年は二十代だろう。青い髪。その男が上体を起こした。

 やっぱり相部屋は気を遣うな。

 ベッドの下に潜り込み、カバンからノートを取り出す。それを眺めていると、先ほどの先輩が下りてきた。対面するような形でベッドの端に座る。


「それ日記?」


 話しかけられたので見るのをやめ、起き上がる。


「いえ。見ますか?」


 日記だったら見せないだろうが、これはぜひ見せたいものだ。自慢のノートだから。


「ん? どれどれ」


 ノートを手渡す。すぐに察知したのか、口を開いた。


「これは、デバフの効果表か」

「そうです、そうです」


 理解してくれたことが嬉しく、思わず二回言ってしまった。


「懐かしいな。魔物図鑑に載ってたのと同じものだよな。これ」

「魔物図鑑に載っているのは間違いです」

「え? そうなのか?」

「だから僕が修正しているんです。実際に試して」

「はー。それは誰かから頼まれたの?」

「最初は僕が自ら進んで。今はラスゴル様の命により動いてます」

「会長の。それはすごい」

「えへへ」


 アレンに笑みがこぼれた。先輩はペラペラとノートをめくる。ふと思いついたかのように口を開いた。


「これってさ。共通する法則みたいなのないのかな?」

「どういうことですか?」

「例えば、スライム系の魔物には毒が効くとかさ。獣系の魔物には火属性が、水棲、飛んでいる魔物には雷属性が効きやすいっていうのと同じで」

「・・・・・・なるほど!」


 それは気づかなかった。攻撃魔法と同じようにそういった共通性があるのかもしれない。


「それがわかると、だいたい予測つくじゃん? 新しく出会った魔物には、このデバフを使えばいいって。もちろん例外はあるだろうけど」


 先輩はノートを返してくれた。


「がんばってくれよ」

「はい! ありがとうございます」


 先輩は戻っていった。アレンは仰向けに寝転がり、改めてノートを見返す。

 スライム系はだいたいデバフは効く傾向がある。獣系はまだ三種しか試してない。その三つを比較すると眠りに効果がある。

 獣系には眠りが効きやすいのか。でもサンプル数が足りないな。

 消灯時間がきたようで、灯りが消えた。ノートを脇に置く。新たな発見にワクワクしながら、アレンは眠りについた。

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