第27話 少々めざわりだ。消えてもらおう

 会長の部屋。

 最上階にあるこの部屋から眺める景色は格別だった。築きあげた地位を示すように壁には絵が飾られ、壷が置いてある。それらを絨毯が敷かれたソファーの上で鑑賞する。そのとき、グラスで飲むワインの味は格別だ。

 グラスに口をつけたとき、ノックの音がした。入れと命じるとドアが開く。管理部長の男、ゴーザが入ってきた。前頭部の髪が少ない。五十代のメガネをかけた男で、背は低く、やせていた。申し訳なく入ってくるその様子に頼りなさを感じる。


「会長。少しお話が」

「なんだ? 手短にすませろ」

「はい。新しく入った魔法士のアレン・ブロードウェイですが。例の・・・・・・」

「ああ。図鑑の間違いに気づき、訂正をお願いしてきた」

「そうです。そのアレンが研修担当に訂正のお願いを再度、会長にしてくれと言ったようでして。その担当者が先ほど、私に会長に伝えるように、と」

「なるほど」

「いかがいたしましょう?」


 ラスゴルはグラスを置く。

 若造が生意気な。


「しつこいな。そのアレンとやらは」

「はい。まったく。身の程知らずというか」

「ゴーザくん。一つお願いできるか?」

「はい。なんでしょう?」

「そのアレンとやらに不祥事を起こさせなさい」

「不祥事、ですか?」

「うむ。詳細は君に任せる」

「そのあとは彼を辞めさせる。そういうことですね?」


 ゴーザは気持ち悪い笑顔を向けている。正解だと褒められたいのだろう意図が見えた。

 ラスゴルは返事をしなかった。その代わり、首を左右に振ってコキコキと鳴らした。


「行きなさい」

「は、はい。それでは失礼しました」


 ゴーザは部屋を出て、ドアを静かに閉めた。

 ラスゴルはワインを入れたグラスを片手に立ち上がった。カーテンを少し開き、夜景を眺める。グラスに口をつけた。

 アレン・ブロードウェイ。

 魔力値は最低のFランクだが、アルファナ都市を救った功績。

 さらに魔法学校の理事長、魔法士の推薦者がいたから仕方なく魔法士にしてやったが。


 少々めざわりだ。消えてもらおう。

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