キタキツネ漫画家になる
けものフレンズ大好き
キタキツネ漫画家になる
『無事セルリアンを倒せたアンドかばん何の動物か分かっておめでとう会』の日、決意して振り返らず、同じヒトを探しに旅立ったかばんちゃん。
そして、決意したのかどうかいまいち分からないが、とりあえずついていった何人かのフレンズ。
彼ら以外にもまた、あの場所で新たな決意をしたフレンズがいました――。
ここはゆきやまちほー。
ゆうえんちでの疲れを癒すため、キタキツネちゃんとギンギツネちゃんは真っ先に温泉に入ります。
いつもならゲームをしてから温泉に入るキタキツネちゃんも、今日は素直に一緒に入りました。
ギンギツネちゃんはそれほど疲れたのかなと思いましたが……。
「ギンギツネ、ぼく漫画家になる?」
「は?」
藪から棒に言った言葉に、ギンギツネちゃんは呆然とします。
「えっと……どういうこと?」
「ゆうえんちでオオカミに漫画を見せてもらった。すごく感動した。ぼくも書きたいと思った」
「キタキツネ……」
ギンギツネちゃんはキタキツネちゃんがゲーム以外にも興味を持ったことに、感動します。
このままではキタキツネちゃんが、ずっとゲームセンターに引きこってしまうのではないかと、心配していました。
もっとも、漫画家もあまり外に出ない職業ではありますが……。
「でも漫画家ってどうやってなるの?」
「ぼくもよく分からないから、とりあえずオオカミに弟子入りする」
「それがいいわね」
「……気が向いたら」
「ちょっと――!?」
温泉のリラックス効果か、徐々に決意がゆらぎ始めるキタキツネちゃん。
翌日、ギンギツネちゃんはやる気が半分以下まで低下してそうなキタキツネちゃんを強引に連れ、しんりんちほーのろっじアリツカまで行きます。
「ごめんください!」
「あらお客さんですかー?」
「実はオオカミに用があって」
「やあ、ゆうえんち以来だね」
ロビーにいたオオカミちゃんはすぐに返事をします。
「それで何の用だい? 先に言っておくが、ギロギロの新作ならまだできていないよ」
「ほらキタキツネ」
「えーギンギツネが言ってー」
「私が言ってどうするのよ!」
渋々と言った感じで、キタキツネちゃんはオオカミちゃんの前に出ます。
「実はぼく漫画家になりたいんだ。それでオオカミに弟子入りしたい」
「へえ。それは弟子というかアシスタントだね。ところで君は絵は描けるのかい?」
「・・・・・・」
オオカミちゃんから鉛筆を受け取ったキタキツネちゃんは、直接テーブルに絵を描きます。
「あのー、できればオオカミさんの紙に書いて欲しいのですが……」
「まあまあアリツさん、後で私が消しておくから。へえ、なかなか上手いね。それは君かい?」
「ギンギツネ」
「なるほど。そういうときは髪の色を――」
「まったー!」
ロビーに脳天気な抗議の声が響き渡ります。
「先生の一番のファンの私を差し置いて何をしているのかしら!」
『・・・・・・?』
「私はアミメキリンよ! ゆうえんちで会ったでしょ!」
「ああ、そういえば……」
「……だれ?」
ギンギツネちゃんは思いだしたようですが、キタキツネちゃんは未だ分かりません。
「とにかく私は先生の一番弟子でもあるのよ! 見てなさい!」
キタキツネちゃんから鉛筆を取り上げると、キリンちゃんはテーブルにすごい勢いで絵を描き始めました。
「だからテーブルに直接は……」
「出来たわ!」
キリンちゃんは自信たっぷりに完成した絵を見せます。
「・・・・・・?」
「なんでしょうねこれ?」
「はっきり言って想像すら付かないわ」
「私はヤギじゃないかと思うけど……」
「サーバルですよ! ここにMがあるでしょ!」
「頭から飛び出してるから角かと思ったよ……」
残念ながらキリンちゃんには、キタキツネちゃんほどの才能はありませんでした。
「それじゃあ早速背景でも描いて貰おうかな。私が指名した部分に指名した絵を描いて欲しい」
「うん」
その後、キタキツネちゃんはオオカミちゃんの指示で、作業を始めました。
しばらくギンギツネちゃんは向かいに座ってその様子を見ていましたが、やがて立ち上がります。
「……それじゃあ私は帰るわね。オオカミはキタキツネのことお願い。温泉のことは心配しなくていいからキタキツネはしっかりやりなさい」
「お部屋は任せて下さい」
「・・・・・・・」
よほど集中しているのか、キタキツネちゃんとオオカミちゃんから返事はありません。
ギンギツネちゃんは苦笑して、ろっじアリツカを出て行きました。
「本気を出せばもっと上手く描けるんだからぁ!」
キリンちゃんに関しては、逆に返事をしませんでした。
翌日――。
しばらくしてから行く予定でしたが、どうしても気になったギンギツネちゃんは、朝一番にまたろっじアリツカに来てしまいました。
「こんにちは、キタギツネはどう?」
「それが……」
アリツカゲラさんは複雑そうな表情をしています。
見ると、ロビーで漫画を書いているのはオオカミちゃんだけでした。
「何があったの!?」
「それがオオカミさんが漫画を描いてる間中ずっと驚かせ続けて……」
「いやあ、なかなかいい顔するものだからつい。キリンと同じ感覚でやってしまったよ」
「それで帰ってしまって。途中で会いませんでした?」
「折角更生してくれると思ったのに……」
ギンギツネちゃんはガックリと肩を落とします
その後、キタキツネちゃんが以前よりさらにゲームにのめり込むようになってしまいましたが、それはまた別のお話。
そして――。
「どうです!?」
「……サーバル?」
「今度はヤギです!」
キリンちゃんの腕は一向に上達しませんでした。
おしまい
キタキツネ漫画家になる けものフレンズ大好き @zvonimir1968
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