ぱすてきかふぇ

昼下がりの紅茶

第1話

「ばすてきかふぇの調子はどうですか?」

はかせがアルパカに質問する。

「あぁ、すごいいいよぉ。かばんちゃんがいた間に相談してよかったよぉ」


しんりんちほー。としょかんからほど近い場所。ばすの様なものが止まっている。ばすより小さく、上部にカップのマーク。その横に座ってサンドイッチを食べているトキ。周りにはテーブルが並べられている。その一つ、ばすてきなものに近いテーブルにはかせとじょしゅが座っている。


「ならよかったのです」

 端的にじょしゅは言う。


「ありがとねぇ。あっ、ヒグマちゃんもお手伝い感謝だよぉ」

ばすてきかふぇの中、屈んでいるヒグマが手を挙げる。


「あっ、それと、もうお湯が沸くから茶葉入れてくれないかなぁ」


アルパカがそう言うやいなや、ケトルの音がする。お湯が沸いた証拠だ。その音を聞いてトキが下りてくる。


「アルパカ、なんだかこれより先のことが分かるみたいね」

「ん? そんなことないよぉ」


 笑いながら、手を横に振っている。


「そんなことあるぞ。アルパカが言った瞬間、パンが焼けたり、ポット?が音鳴ったりするんだ」


 そう言って、ヒグマは茶葉をポットに入れる。ついでに横のオーブンからホットサンドを取り出してくる。合点言ったようにトキは話す。


「やっぱり。この前も「じゃんぐるちほーでセルリアンが出てるみたい」とか「今日雨が降る」とか言ってたじゃない」

「それは、予知というものです」

 

 いきなり話に入って来るはかせとじょしゅ。


「よち?」

「そうです。この先のことが分かる、知ることができると言う事です」

「そういう事じゃないと思うよぉ」


 フクロウコンビの話を熱心に聴くトキの横、アルパカは首を傾げている。

「いいこと聞いたわ、みんなに知らせてこないと。次はみずべちほーに行くのよね」


「そうだけどぉ、っておーい」

 アルパカの返答を聞くか聞かないか、トキは大空へ消えていく。


「さぁ、われわれも帰って本を読むのです、じょしゅ」

「そうですね、また来るのです」

喋るだけ喋ったフクロウの二人も森の中へ。それを見ながらヒグマはアルパカに言う。


「なんだか大変なことになってないか?」

「だいじょぶでしょ。あっそうだ、二人でお菓子用意しようかぁ。みんなたくさん来そうだねぇ」



 次の日。みずべちほー。アルパカはヒグマを乗せて楽しそうにゆっくりゆっくり運転している。

アルパカが広い水辺に車を止める。今日はペパプのライブもなさそうで、静かな空気が流れている。


「ここなら、広さも十分でしょ」

 周りも見てうんうん頷くアルパカ。


「ああ。ん? トキがこっちに帰ってくるぞ」

 ヒグマの指さす方にトキが一人。すぐさま、かふぇの横に止まると、


「わあ。素敵な場所ね。歌いたくなるところだわ。そうだ、いろんなちほーで言ったけど、後でみんな来るって言っていたわ」

 トキはそう言って、今にも歌いだしそうだ。


「よぉし、お菓子今から焼こうかぁ」

「間に合うのか?」

「間に合う間に合う。たくさん、用意しないとねぇ」



それから数時間。かふぇの周りにはたくさんのテーブルとたくさんフレンズたち。ラッキービーストも2匹いるみたいだ。


「あんれまぁ、みんなよく来たもんだねぇ」

「かなり多いな」

驚くアルパカとヒグマの二人。


「みんなぁ、お菓子もお茶ももうできるからちょっと待ってね」

 

 みんなに聞こえる大声でアルパカが話し終えると同時に何本かのケトルとオーブンの出来上がりの音が鳴り始める。それだけで集まった彼女らは「すごーい!」や「わーい! たのしみー!」と言った声を立て始める。


 今日のおやつは紅茶とできたてのクッキー。ちょうどでおやつはなくなり、配り終えた3人ともかふぇの周りに戻ってくる。


「ふぅ。じゃあ、配り終えたから、さ、食べて。どうぞ飲んで」

 と、アルパカは言ったのだが、フレンズたちは食べようとしない。というか、息を飲むのが分かるくらいに静かである。


「あら、よちはしないのかしら。みんな待ってるわ」

「ダメなのです!」

アルパカが話そうとした瞬間、はかせの声が。フクロウコンビが急いでアルパカの前にやって来る。


「はかせ、どうしたんだい? 大声出してぇ」

「調べたら、予知の原因が分かったのです」

「げんいん?」

 みんなは、はかせの言葉に耳を傾ける。


「はい。あなたはアルパカではなく、実はくだん、という動物なのです」

「くだん?」

 じょしゅの言葉に首をひねるアルパカ。はかせが説明を始める。


「そうなのです。くだんとはウシの体にヒトの顔という奇妙な動物です」

「はい。そして、最大の特徴として、予知をすること、予知した後には死んでしまうということあげられます。ですので……」


 じょしゅの追加の説明を聞いた周りのフレンズたちはざわめき始める。「くだん?」「

しんじゃうの?」といろんな声が出始める。

 その声を遮るように、アルパカが喋り始める。

 いつもと変わらぬ調子で。


「いんや、だからあたし、一度も予知したことないんだよぉ」

 

 周りが、ポカンと口を開けている。


「そうなの?」

「ではなぜ、未来のことが分かるのですか?」

 トキやフクロウたちが質問をぶつけて来る。


「いんや、未来のことって言ってもねぇ、カフェのことはずっとやってるから、なんとなく体で覚えちゃったんだよねぇ」

「ああ。まだ日は浅いけど、なんとなくわかるな」

普通の調子で話すアルパカと横でうんうん頷くヒグマ。


「では、セルリアンや、天気などはどう説明するのでしょうか」

 じょしゅは素直な疑問をアルパカに聞く。


「ああ、それはねぇ、みんながカフェに来てくれるからだよぉ」

 朗らかにアルパカは答える。


「お客さん……?」

「そそ。このばすてきかふぇにしてみてぇ、よりみんな来るようになってくれたの。それで、なんとなく耳に入ってくるんだよぉ。どこどこのちほーでセルリアンが出たとか、雨が降っただとか。だから、そっち行ったら危ないよとか、こっちが晴れるみたいだよとか言ってたから、それがたまたま当たったんじゃないかな。ごめんねぇ。みんなに勘違いさせたねぇ」

 

 恥ずかしそうにアルパカは頭をかく。フレンズたちに安堵が広がり、フクロウコンビは息をふーっと吐く。


「そうなのですか。早く言ってください。心配して損しましたよ」

「そうですね。それでは、これを早く食べに帰るのです」

さっさと自分のテーブルに帰っていくフクロウたち。


「そんなわけだから、よち?はないけど、ゆっくり飲んで、食べていってねぇ。あっ、そうだ」

 そう言うと、アルパカはぽんと手を叩く。


「よち? かどうかわからないけど、あたし、これだけはわかるよぉ」


アルパカはフレンズたちを見渡して、微笑む。


「みんなねぇ、食べたら、笑顔になるよぉ。それじゃあ、どうぞどうぞ」


 食べ始めるフレンズたち。アルパカが笑顔で頷いていると横には下を向いているトキが。


「私の早とちりだったみたいね」

「そんなことないよぉ。ほら!」

アルパカはトキの顔を上げて、周りを見せる。フレンズたちは良い笑顔で紅茶とクッキーを食べている。


「ね、これがよち?になるんじゃないかな」

 顔を見合わせるトキとアルパカ。

「そうね。じゃあ、一曲歌おうかしらね」

すぐさま、フレンズたちの方へ飛んでいくトキ。アルパカはヒグマと共にばすてきなものの横でみんなを見ている。

 

 ふとヒグマがアルパカに話しかける。


「けど、アルパカ」

「なになに?」

「なんでお菓子の数、わかったんだ?」

 少し考えてからアルパカは笑顔で言う。

「なんでだろうねぇ」




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