第18話ラブホテルにて
30-018
十一時を過ぎると、佐伯達は帰って行く。
交代の様に二人の客が入って来て、弓子も花梨の様子を見る暇も無い。
佐伯は、見送りにも出て来ない花梨を不満に思いながらも、知り合い二人と何事も無い様に帰った。
十二時前に成って、客が次々と帰って行くと「花梨さん、どうしたの?」とカウンターに顔を伏せて、眠っている姿を発見した美千代。
「先程から、寝ちゃったよ」と笑う大藪。
「えー、こんなに飲んだの?」とボトルを見ると三分の一程の量に成っている。
しばらくして客が大藪以外は全員帰って、片付けを始める弓子と恵美子。
「ママ、すまないな、こんなに酔っ払っているとは知らなかったよ」と微笑む大藪。
「困ったわ、自転車は明日取りに来るとしても、公団に連れて帰るのがね」と言う美千代。
「飲ませた私の責任だから、タクシーで送るよ」と大藪が待っていましたと言う。
「私が送るわ!車取って来ますから、片付け終わる迄待って」と美千代が危険を感じて言う。
大藪は自分がいつも使う個人タクシーの菅原に、メールで連絡をして待機する様に指示をしていた。
何度となく女性をラブホに連れ込んだので、菅原もよく知っている。
いつも過分の小遣いを貰って居るので、慣れた行動で久々に小遣いが貰えると張り切っていた。
しばらくして、車を駐車場に取りに行く美千代が、車に乗り込んでスナックビルに近づいた時、パトカーが美千代の車を止める。
「飲酒の車が多いとの、通報が有りました」と警官の声に「殆ど飲んでいませんよ」と言うが美千代は直ぐに調べられる。
店に慌てて電話をする美千代「えー、ママ飲酒で捕まったの?」と驚きの声を上げる弓子。
自分も飲んでいて、同じ場所に車を駐車しているので、しばらく動け無い状況に成った。
恵美子は亭主が迎えに来て先程帰って行ったから、ママが戻ると大藪と二人で公団に送る予定だった。
ソファーに寝そべる花梨は全く動かない状態だ。
「困ったわ、ママ警察に捕まったみたい」と弓子が大藪に言う。
「えー、それは困りましたね、弓子さんも車でしたね?」と心配するが内心は喜んでいた。
困り顔の弓子が「駄目よ、同じ駐車場だから、捕まるわ」弓子も動け無い。
「私の知り合いのタクシー呼びましょうか?もうすぐ一時に成りますよ」と時計を見る大藪。
暫く待って「大藪さんも遅く成るわね、お願いしなければ仕方無いわね」と弓子が承諾をした。
美千代にその後何度か連絡したが、反応が無かったからだ。
大藪は「ママは警察に連れて行かれましたね」と言う。
車を没収されて、身元引き受けが来るまで引き止められると思う大藪。
「菅原さん、スナックビルの前まで、来て貰える?かなり酔っているのですまないけれど大変だよ」と教える。
弓子が「すみませんね、私が乗せられたら良かったのですが、ママと同じに成るので」と謝ると「私が飲ませ過ぎました」と謝る。
しばらくして大藪が花梨を背負って、大藪のショルダーバッグを弓子が持って一階に降りる。
目の前に止まっているタクシーを見て「ママがよく使っている、菅原さんのタクシーだ」と言う。
弓子は安心したのか「ご苦労さまです」と菅原に声をかけた。
「(梨花)さんの女の子だったね」と弓子に笑顔で言う菅原。
花梨の顔を数度しか見ていない菅原は知らないから、従業員が飲み潰れたとは思っていない、大藪が連れて来た客だと考えていた。
大藪がまた何処かの女性をものにする為に、酔い潰したと思っていた。
車に乗せると「荷物はまた明日、渡すわ」と大藪の重いショルダーバッグを手渡した。
「お願いします」と弓子が大藪に頼むと、扉が閉まって車が発車した。
「大藪社長、今夜の子は随分酔っていますが?大丈夫ですか?」と心配して尋ねる。
大藪が獲物を手に入れた顔で「風呂でシャワーを浴びれば目が醒めるよ」と笑う。
「いつものホテルですか?」
「そうだ、頼むよ」
「二時間程でお迎えに来ますか?」と確かめる菅原。
「家に帰って着替えないと駄目だからな、七時に帰れば間に合う」と微笑む。
完全に意識が無い状態で眠る花梨、今夜は上手く事が運んだと喜ぶ大藪。
しばらくして、ラブホの入り口に到着するとタクシーは路肩に停車する。
その時菅原のメールに(警察に迎えに来て貰えませんか?)と美千代が送りつけていた。
菅原が手伝って、花梨をラブホの中に連れて入る大藪。
「それでは、また後で来ます」とお金を貰ってタクシーに戻る菅原。
携帯のメールを見て「警察?」と不思議に思いながら、美千代を迎えに向かった。
家族に連絡が出来ないので、タクシーで帰って明日車を誰かが取りに来る事で許された美千代。
ラブホから十分程で到着するタクシー、昼間は渋滞で時間がかかるが深夜は早い。
警察前で「ママさん、どうされたのですか?」と驚き顔で尋ねる菅原。
「飲酒で、捕まったのよ」苦笑いの美千代。
「えー、珍しいですね」
「本当よ、今夜はびっくりしたわ」と怒った様に言う美千代。
「今、(梨花)さんの客を送って行って、またママを迎えに行くとは思わなかった」と笑う菅原。
「えー、誰を送ったの?」と不思議そうに尋ねる美千代。
「今、大藪社長を送って行ったのですよ」
「自宅は遠いでしょう?」と怪訝な顔の美千代。
「いつもの、女性連れ込みですよ、今夜の女性は大変酔って。。。。。。」と言う言葉を遮って「その、ホテルに急いで」と美千代が急に態度が変わった。
「どうしたのですか?」と驚いて尋ねる菅原。
「その子、うちの従業員よ!大変だわ!急いで!」と慌てる美千代。
菅原のタクシーをよく使う美千代は、殆どの話をこの男から聞いていたから、大藪のやり方は知っていた。
「大変だ、従業員さんが承知の上なら良いが、あれだけ飲んでいて、判らない時に強姦したら犯罪に成りますよ」と菅原も言う。
部屋に連れ込まれた花梨を大きなベッドに寝かせて、鞄からカメラを出して撮影を始める大藪。
今後、文句を言えない様に写真を写して、安全を確保する魂胆だ。
衣服を脱がせて撮影をしようと、スカートを脱がせに入る大藪が「酔っ払いは何故こんなに、重いのだ」と呟きながら俯せにして、ファスナーを降ろしてスカートを足から抜き取る。
半袖のブラウスのボタンを外すと、キャミソール姿に成る花梨。
カメラを構えて数枚の写真を撮影する大藪が「中々、寝顔が可愛いじゃないか?」とキスをしようと覆い被さったら、胸と腹を圧迫したのか「うえー」と嘔吐き始める花梨。
「えー、何だ」と直ぐに身体から離れる大藪。
圧迫が治まると、また眠り始める花梨に「こりゃ、相当酔っているな?」と風呂場に連れて行こうと考える大藪。
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