特別編 夜空の燕

そらが青々と広がっている。

湖へと続く広く長い川にかかる橋。

橋一つ越える度に風の冷たさが増していく。

週末は雪が降るなんて言っていたけど、

まだまだ涙を溜め込んだ雲は

遠い向こうらしい。


ーういしんー


「おはよう」


「おはよう」


「今日はとても寒いよ。」


「だいじょうぶ。中国もっとさむい。」


「燕は今日は仕事か?」


「わたし毎日仕事。」


「また休みないのか?」


「ない。1ヶ月に一回か二回だけ。」


「大丈夫か?疲れてないか?」


「だいじょうぶ。ちょと眠たいだけ。」


「☺」


「あなた今日やすみか?」


「休み。今は買い物する。」


「何を買いますか?」


「あなたにクリスマスプレゼント買う。」


「なに?」


「圣诞礼物 わかる?」


「わかる。」


「燕ほしいものあるか?」


「☺なんでもいい。」


「なんかないのか?」


「なに?」


「衣服、配件马 铃薯 土豆 或我?☺」

(洋服 アクセサリー カバン じゃがいも それともわたし?)


「なんでもいい。」


「わかった。(ボケたつもりだったのにながされた💧)何か送るし住所教えてね。」


「オッケー。」


「仕事がんばってね。」



なんでもいいが一番困る💧

などとブツブツ言いながら、サンタとトナカイだらけの、電飾で華やぐショッピングモールをウロウロする。


結局のところ僕は燕への気持ちを断ち切れずにいる。

彼女がどう思っているかはわからないが、僕は1年間だけの良い思い出では収まりきれなくなってしまった。


中国と日本でもーういしんーはつながる。

9月に燕が日本を離れてからも定期的にやり取りはしている。

一昔前なら完全にあきらめモードだった。

国際電話とか無理だし。

世の中にスマホが流通したことに感謝だ。



あれからいろいろと調べた。

燕を結婚せずに日本に呼び戻す方法。

しかし当然そんなに簡単ではない。

そんな自己中でうまい話などないのだ。

①日本の学校に留学する。

②中国で日本の企業に就職する。

(いろいろと条件付き)

③日本人と結婚する。

ざっくり3通りだけ。

しかも①はお金がかかるし、

②はかなり難しい。


つまり結婚以外には無いに等しい。


そうだとしても僕は彼女と一緒にいる事をのぞむ。

彼女はどう思っているか、正直良くわからない。


「燕は日本に来たいか?」


「行きたいです。」


「あなたが日本に過ごすには、結婚以外は難しいよ。」


「わたし日本に行きたい。でも今じゃない。あとで行く。」


「オッケー。」


オッケーと言ったものの、返事につかみどころが無い現状…。



プレゼントを買うのは楽しい。

いろいろと店をまわり結局、

白いふわふわなセーターと赤いモコモコしたマフラーを購入した。


さて、買ったは良いがいったいどうやって中国に送ったらよいのだろうか?


とりあえず日本語のできる、中国人の同期の社員に聞いてみる。


「郵便局にいって中国に送りたいって言ったら教えてくれるよ。」


「ありがとう!」


とは言ったものの、ざっくりしすぎで良くわからない💧


それを曖昧にしてしまうのが僕の困った性格だ…。


結局のところ郵便局に行って聞いてみる。


「住所など必要な箇所を記入して窓口までお願いします。」


意外と単純か?


と思いきや…。書き終えて窓口に持っていくと、


「では、こちらの欄に送るものを中国語で記入してください。」


「中国語…!わかりました。」


とりあえずスマホで翻訳する…。

お菓子に、瓶詰め、、セーターにマフラー…


合ってるのかな?


まぁいいか。


「これでいいですか?」


「はい。では、今中国語で書かれた品物を日本語でこちらの別紙に記入して、だいたいの金額を記入してもらえますか?」


いや、めんどくさ!


なんとか用紙と格闘の末、


「では4670円になります。」


たかっー、(T_T)


などと15分くらい悪戦苦闘しながら、なんとか手続きを終えた。


国際恋愛は大変だ。


そのままスーパーで晩御飯をかいながら、

クリスマスのお菓子詰め合わせを発見し、


「しまった!これを入れたら良かった。」


なんて思っても、もはや後の祭り。



ーういしんー


「今日あなたにクリスマスプレゼント送ったよ!」


「ありがとう。何を送る?」


「秘密」


「オッケー!」


いや待てよ、もし届かなかったらどうしよう。


さて荷物は無事に届くのだろうか?「」「」「」「」「」「」

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