リセット
ビルの群に沈む太陽
窓のガラスに反射する
今日の終わりを告げる光
夜が目を覚ますように、
光を放つネオンたち。
光は希望であるはずなのに、
僕には少し眩しすぎるみたい。
闇を持つのがいけない事のように
自分の影を色濃く写す
西に沈むその赤い光ももうすぐ落ちて
夜の静寂に自分の影を隠すよ。
いつから彼はこんな悲しい詩を書くようになったのだろうか?
ガラス越しの彼を見ながら、昔の事がフラッシュバックする。
思い出はだいたい美化されるものらしい。
あの頃は良かったなんて言うのは、今が満たされていないから。
過去の良い思い出だけが、それしかなかったかのような気持ちになる。
でも今の私は違う。
何故あの時、彼の事をもう少し理解しようとしなかったのだろうか?
浮気は許せないし、ゆるされない。
でもそうなる前に気づいてあげられなかったのは私なのかもしれない。
角度の違う見方が出来なかったのは
やはり精神が幼かったからなのか?
思い出の美化よりも何故かその歌を聞いたら後悔だけが込み上げてきて、
そのまま人混みに紛れてその場を立ち去った。
「おかしいな。電話でないわ。」
「誰かと約束してたんですか?」
「うん。友達とご飯食べに行く約束してたんだけどな、さっきスタジオの前にいたのみたんだけどな…。」
「あずみさんでもすっぽかされることあるんだ。」
「そんなんじゃないわ…。あっLINE」
ーLINEー
「ごめんね。ちょっと体調悪いし今日はかえる。」
「大丈夫?」
「うん。ごめんね本当に。またこちらからさそうね。」
「OK。休みゆっくり過ごしてね!また今度ご飯にいこうね!」
「うーん。フラれてしまった。しかたがないから帰るか!」
「ちょうどバイト代入ったところだし、仕方がないから、僕が一緒にご飯行ってあげましょうか?」
「なんかムカつく!」
「へへへ。」
「仕方がないからおごられてあげよう。」
どれくらい時間がたっただろうか?
いろいろ考えていたら涙が止まらなくなってしまい、とりあえずトイレに駆け込んだ。
あずみちゃんにLINEで謝ると、少し気持ちが落ち着いてきた。
尊樹の事もあるし、今の私の気持ちをあずみちゃんには相談できない。
外に人の気配がないのを確認して、個室からでると素早く目の辺りを水で流した。
アイラインがのびてパンダみたいになっていたのでメイクを直した。
ついでに目がいたかったので、コンタクトを外して眼鏡に変える。
帰って一度頭をリセットしよう。
そう思って鏡の前で
「よし!」
と言ってみた。
気持ちを切り替えてトイレからでた。
とはいえ家で一人になったら、また一人で無駄に考え込みそう。
変に考え込むのも嫌だし、少し頭をクリアにするために、気晴らしに少しウインドウショッピングでもして帰ろう。
夏物のシャツ、袖のフリルがかわいい。
そういえばこの間サンダルのひもがきれたからなー、新しいサンダル買おうかな?
などと悩みながら結局買わない。
それから前から気になっていたサマンサベガのバッグを眺めてから、店員さんから声をかけられる前に退散する。
そういえば欲しかった小説があったなーと、思い出して上の階にある紀伊国屋書店にむかった。
一通り雑誌を眺めて、欲しかった小説とついつい気になって、星野源のエッセーを買ってしまった。
本でも読んで気分転換しよう…。
「あれ?恵ちゃん?」
「あっあずみちゃん!」
「えっ何?二人って知り合いなの?」
さっさと帰るべきだった。
あずみちゃんとユウスケに遭遇…。
実にややこしい事になってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます