車窓から

ただ流れる窓の外を見るだけのお仕事です。

どこにいくのかわからないのは、

僕も同じさ。

ただ流れる窓の外の思い出をつぶしながら

どこに着くのかわからないのは、

僕も同じさ、僕も同じさ。

空を走る 夜をかける それは本当に

空を走る 夜をかける 鉄道はここにあるよ



一見、なんて事ない風景画のような歌詞にきこえるが、僕には悩み苦しむ若き心情をかんじる。

鉄道とは、鉄の道。すなわち替える事のできない引かれたレール(人生)。

空を走るけれど、夜、つまり闇の中も駆け抜けなければならない。過去(思い出)をつぶしながら、それでも前に進みつづけるが、何処に向かっているのかは自分すらわからないのだ。


…なんてついつい深読みしてしまう。

ちょっとした職業病だ。

人の詩は勝手に読み取るけれど、自分の想いを書き出すのは、大人になるほどに難しくなっていく。

ただ思った言葉をつなげただけでは、深みが、内容がないと感じてしまうのだ。 


「何ぶつぶつ言ってるの?もうすぐCMあけるよ。」

「あっ、はいはい!」

「はい、1回笑って笑って、今日はいっぱい見にきてるよ!」

「はい、五秒前、4、3、2……」

「はーいradiostation本日のゲストは、ルーラです!」

「こんにちは!ルーラです。」

「私誤解してたんだけど、ルーラて、一人なの?」

「そうそう、コーネリアスとかTMrevolutionみたいなもんです。」


たしかにスタジオ前は人で溢れていた。

地元に戻って地道に活動してきたかいあって、そこそこファンが付いてくれた。

…と言いたいところだか、本当は9月に開催されるフェスを主催する、全国区の大物がこのスタジオに来るので、メインは恐らくそっちだ。

とは言え今日の出演も、僕がそのフェスに呼んでもらった事で決まった。

あずみさんが一押ししてくれたらしい。


「ルーラは9月のフェスに出ることが決まってるんですよね。」

「はい。今年初参加します。地元民ということで、声かけてもらったんすよ。」

「しばらくは東京で活動してたんですよね。でも地元愛強さで戻って来たのかな?」

「いや、ただの…」

あっ!

スタジオ前の雑踏に彼女を見つけて一瞬止まってしまう。


「ただの?何?」

「ただの…ホームシックです。」 

大爆笑。


今のは間違えなく恵だった。

こちらにむかって手を振っている。

「ホームシックって、湖が恋しくなったのかなー?それとも家族かな?」

「いや、恵が…。」

「けい?」

「いや、経済的な事情ですね!要するに売れなくて逃げ帰ってきたんです。」

「…ん?」

「いやいや冗談ですよ。今のは笑うとこ。やっぱり自然に囲まれると、インスピレーションが上がるというか、ほら僕のルーラって名前は、ドラクエの魔法からつけたんですよ。知ってます?行ったところにいつでも行ける魔法。」

「知ってる知ってる!」

「知ってる知ってる!ってジミー大西か!」

「はっはっはっは!」

「いつでも故郷を思い出せる。それから、自分が歩んで来た人生も振り返られて、自分の原点を忘れないようにしたい。って思ったんですよ。」

「いや、まさかのおふざけキャラから深い言葉いただきましたよ。」

「おふざけキャラって!」

「ではでは、ルーラの懇親の一曲聞いてもらいましょうか!曲紹介お願いします。」

「はい。では聞いてください。」

sunset Reset


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