第76話 しこたま
しこたま。
貴重なものがたくさんある、という意味なのだが、どちらかと言うと非合法的にかき集めたようなニュアンスを感じる。「しこたまありますぜー」は、「ここにしか無いものがたんまりありますぜ、旦那。」という感じ。
「たんまり」とは、ゆったりとした様子。どっさりとある様子。こちらも「たくさん」という言い方より、耳打ち的な要素が含まれているように聴こえる。「首尾よく事が済めば、手間賃はたんまりとはずみますぜ旦那。」悪徳商人が用心棒を雇う時の常套文句という感じ。そうそう、たんまりと溜め込む。という言い方もよく聞くので、ついつい非合法的な匂いがつきまとう気がしてしまう。
「にんまり」という言葉もそうだ。顔の下から灯りを照らし、煽り気味のカメラで表情をアップで写しながら、どうだ、してやったぞ的に、にやりと笑う感じ。人に隠れてほくそ笑むのとは少しニュアンスが違い、腹の中でどす黒く笑うから凄みを出しやすい。悪代官に上納金を隠した菓子箱を差し出して悪徳質屋共々二人でにんまりする場面か。
それとは別に「しこ」の方は相撲の「四股」のイメージも投影され、重さ的な意味が加わったとも聞くが、自分的には「固くなる」という意味合いで聞く事が多いような気がする。「しこってきましたわ、旦那。」という感じ。しかしこちらは吉原が舞台になるような気もするので以降は後日にとさて置き。
いずれにせよ、ノアールな雰囲気を伴う言葉の方が、記憶の底に長く留まると思われ、それ故江戸の辺りから使われ方の幅を利かせてきたのでは無いだろうか。そんな雰囲気に浸りたい時、意識的にしこたま使ってみたい言葉ではあるなあ。とにんまり。
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