第8話 甲斐性なしの依怙地
その昔、甲斐という国に庄兵衛という名主がおって、こいつが物凄い吝嗇家で、自家の使用人一人ひとりの一日の塩分や酒の摂取量まで事細かく計っては帳簿につけているような人物だったとな。或る日この家に衛食次という妾腹の子が引き取られてきたのだが、こいつが意気地なしの上に箸にも棒にもかからない博打打ちの放蕩息子で、勘当されては父親が折れてを繰り返すうちに、その意固地さ加減が庄兵衛の蓄えを食い尽してしまい、とうとうその家は没落してしまったと。そんなことがあったものだから、町の口さがない連中はかのような親子を指しては、あれはもう、甲斐庄無しの衛食次だね、と言ったとか言わないとか。これを転じて、どうしようもない奴のくせにしつこい奴のことを甲斐性無しの依怙地野郎と、言うようには決してなってはいない。
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