第2話君の分まで
「あー!!」
叫び声を上げながら明訓はベッドから跳ね起きた。
高田明訓32歳は、恵の手が離れた瞬間の悪夢を罪悪感として色濃く残っていた。
隣では妻の雪が明訓の背中を擦っていた。
「また、あの夢?」
「あぁ、すまない。」
「良いんです、わたしは大丈夫だから。」
雪とは、恵の通夜で初めて会った。
憔悴しきっている明訓には皆冷たかった。
雪だけが帰ろうとする明訓を引き止めた。
「お姉ちゃんは、いつも明訓さんの話になると嬉しそうに話してたんですよ。」
明訓は、吐き出すように涙を流して叫んだ。
明訓を雪は抱きしめた。
「大丈夫です。わたしは明訓さんの味方だから。」
あれから明訓にはペナルティが付けられた。
死ぬまでいつ命を落とすかもしれない仕事に従事させられる判決が裁判所で出された。
あの、太った男は今だに逃走中である。
雪は、親に反対されながらも明訓と結婚した。
お姉ちゃんが天国でおめでとうって言ってくれてるよ。
今、明訓は刑務所で刑務官として働いている。
死刑と決められた罪人の世話である。
死刑執行のボタンを押す。
そうすると罪人は首の骨を折れ死ぬ。
しかし、中では強靭な肉体を持つ罪人は首も折れずに窒息死する。
一番苦しい死に方である。
残酷な仕事である…。
自分のメンタルが壊れるか、保てるかギリギリのラインである。
この仕事は民間ハローワークからの仕事である。
今でも思う事がある。
あのハローワークさえ無ければと…。
しかし、いつも向かえてくれる雪をみてると
雪が、恵に見えるんだよ。
君の分まで俺はギリギリの精神状態でも戦うよ。
恵…君の分までね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます