幕間
静かに横たわる葵の横にそっと腰を下ろした睦月。寝息が聞こえることから、大分体調は回復したことがうかがえる。
良かった。舞姫の治療が効いているようだ。
本当はあのまますぐに帰るつもりだったが、どうしてもすぐに帰る気になれなかった。
「あのね、葵。君助けてくれたのは拓斗さんなんだよ」
もちろん、葵から返事が返ってくることはない。それに、葵に言った所で分かる事ではない。
「君に会わせてあげたいな。拓斗さんに」
葵が彼を見たらなんと言うのだろうか。
人間。いや、もしかしたら妖怪と言うかもしれない。
それでも彼はきっと笑顔で返すのだろう。「好きに考えていいよ」と。
なんとも言えないもどかしさだけが、心にジワリと広がっていった。
運命とは、なんて皮肉なものなだろうか。
そんな時、睦月は驚くべき光景を目にした。
葵の上に白い光りの球体が浮かんでいたのである。
妖怪の仕業か。いや、違う。
とても温かい光りだ。懐かしいような。
− もしも叶うなら、何事もなく、静かに −
すると、直接頭に女性の声が響く。
− でも、そうはいかないのよね −
葵のことを心配しているのか。
この光の正体は一体。
しかし、その光は間も無くして空気に溶け込むようにして消えてしまった。
あっという間のことに呆気を取られてしまった睦月だったが、ふと睦月の方に寝返りを打った葵を見て、クスリと笑みがこぼれた。
「早く元気になってね」
そして、そっと葵の額に口づけをした。
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