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すると、悠太は司の手を取り来た道を戻り始めた。行動の意図がつかめず、躓きながらその背を追う。
「ゆ、悠太くん?」
「街、行くっすよ。洋服に本に、ケータイもいるっすね。それから、司っちの欲しいもんがあったらついでに買うっす」
「買うって……僕、無一文ですよ?」
「料金なら、俺が出すっす」
当然そうに言う悠太に、司は顔色を変える。
「そんな、僕のものを買うのに悠太くんがお金を出すなんて!」
慌てる司をチラリと一瞥した後、悠太はまた前を向き小さく笑った。
「じゃあ、初任給入ったら俺に何かごちそうしてほしいっす。それでチャラでいいっすよ」
「初任給?」
首を傾げると、見てもいないのにそれを悟ったらしい悠太が、声を出して笑う。
「遠坂先輩から聞いてないっすか? アルゴノーツは、出動のたびに国から給料が出るんすよ。まぁ、危険なとこに向かわせる謝礼金みたいなもんなんっしょ。それくらい貰わなきゃ、俺らもやってけないっすからね。命張ってんの前線なんっすから」
出動のたびに給与が支払われる……いわゆる歩合制なのだろうか。確かに、それくらい貰わなければ命を懸けて戦うことに釣り合わないように思えた。話で聞いているだけで、その実どれだけそれが危険なことなのか司には分からない。おそらく、実際目の当たりにしなければ分からないことなのだろう。
分からない、ということを嬉しく思えることが、妙におかしかったけれど。
「で、でも、いつになるか……」
「初陣って、みんなそんなもんっすよ。俺も半年くらいかかったっすから」
快活に笑って、悠太は司の腕を離した。そのまま前を行く背を追いかけ隣に並べば、彼が自分より幾分背が高いことを知る。
「何っすか?」
視線に気付いた悠太が、司に目を向け笑う。
「いえ」
答えて、司も我知らず笑っていた。
「よーやく笑ったっすね。遠坂先輩じゃないっすけど、司っちはもうちょい笑った方がいいっすよ。事情が複雑なのは分かるっすけど、やっぱ笑っといた方が気持ちが変わるっすからね」
そう言われ、頬に手を当てる。
「僕、笑ってましたか?」
「無自覚とかウケるんっすけど」
笑っていたのだとしたら、悠太のおかげだ、と司は思った。悠太が明るく笑うから、自分もつられたのだ。
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