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いや、と首を振る。タイムトラベルの研究をしていたというのだから、その研究の助手でもしていたんだ。この歳で研究の助手というのも若い気がするが、親が研究員だったとかそういう理由だったに違いない。研究の助手というのなら、この服装にも納得がいく。記憶がなくなってしまったのは事故の後遺症だと言われればその通りなのだろう。
そうだ。
きっと、そうなんだ。
二〇二六年、
「アメリカが、初のレーザー兵器の開発に成功」
ぽろっと、口から言葉が零れた。
知識は言っている。その年は、アメリカがレーザー兵器の開発に成功し、追従するようにロシア、中国が開発を開始したと。
何故、そんなことを知っているのだろうか。
零れた言葉が信じられなくて、司は自分の口を手で覆った。
それを見た涼が、少し驚いたあと、静かにため息をついた。
「確かに、訳ありのようですね。下手に民間人に保護されるよりは、ここで引き取ったほうが良さそうだ」
涼の言葉に、安心したように志紀は笑った。
「じゃあ、校長に会わせに行ってくる。皆はスクランブルがかかるまでここで待機していてくれ」
志紀の言葉に、各々反応を返す。それもまた、バラバラだ。この人たちは本当にバラバラなのだ。司はぼんやりとそんなことを思った。
バラバラの人たちに、バラバラな部隊。
アンバランスな部隊だ。
そんなことを、考えた。
志紀は廊下を更に進み、いくつものブリーフィングルームを抜けた奥の部屋にある、重厚な扉の前で立ち止まった。教室札を見上げると、『司令室』と書かれている。来るときに志紀が連絡していた司令塔とはここのことなのだろうか。
志紀が軽くノックをすると、しばらくして入るように促された。
中に入ると、なるほど、『司令室』の札に誤りはない。四方を様々なディスプレイが埋め尽くし、緑色の折れ線グラフ(あれがテラー観測数値なのだと志紀が教えてくれた)に格納庫の様子。基地周辺の映像に周辺の街の映像。それから、それから、それから。
数えきれないほどの情報が、そこには溢れていた。
あまりの情報量に眩暈を起こしかけた司のもとに、黒いパンツスーツの女性が近づいてきた。髪を後ろで結び、神経質そうな瞳に眼鏡。年は……正直よく分からない。けれど彼女がここのトップのようで、そこにいる全員が敬礼をして行く手を見送る。
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