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「入学することに異論は?」
答えづらい聞き方をする。正直何が何だか分からないし、聞きたいことなど山のようにある。そもそも自分がどうして二〇六八年にいるのかすら分からないのだ。入学云々以前の問題じゃないか。
司の困惑が分かったのか、志紀が優しく背を叩く。
「分からないことだらけなことは承知の上で頼みたい。ウチの小隊に入ってくれないか」
「な……っ」
志紀の提案に涼が咄嗟に立ち上がる。
「遠坂先輩、私は反対です! 実践に出たこともない人間を隊に入れるんですか?!」
「俺も同感っすー。こっちは命張ってんすから、素人がいられちゃ困るんすけどー」
不満たらたらの二人を、真剣な顔で志紀は見た。
「俺がなんの考えもなしに一般人を連れてくと思うか?」
「それは……確かに戦力増加は良いことですし、隊の人数が増えるのはありがたいです。ですが、だからこそ選定をしっかり行えとの理事長のお言葉をお忘れですかっ?!」
一瞬口を噤み、けれど納得がいかないのか涼は尚も反対をする。司も、判断に迷い志紀を見上げた。
「神宮寺くん、この学園は完全寮制で、当面のしのぎにはなると思う。俺も出来る限りサポートする。
頼む、入学申請をしてくれないか」
それは、真摯な願い。
得体の知れない自分を信じ、託してくれた望み。
闘う術なんて知らないし、戦闘機なんて操ったことはないし、座学などおそらくチンプンカンプンだろう。
それでも、行き場の無い胡散臭い自分を信じて、彼は乞うたのだ。
ならば、それに答えたい。
「僕に、出来ることでしたら」
今は、そうとしか言えない。完全な成績順なのだとしたら、自分はおそらく下の方で、この小隊に配属されることはないだろう。でも、この少年の、志紀の望みは叶えたいと、心から思った。
司の言葉に安心したのか、志紀は小さく笑った。
涼と悠太はまだ不満があるのか不機嫌な顔をしているが、座学、実技ともにトップクラスしか入れない隊だ。どうせ素人の司がこの隊に入ることはあるまいと思ったのか、大人しく黙っていた。
唯一、智治だけが、感情の読めない目で一瞬だけ司を見、志紀を見、視線を窓の外に移した。
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