セルリアンに対するいくつかの考察

けものフレンズ大好き

セルリアンに対するいくつかの考察

「良く来たのです」

「まあ座るのです」

「はあ……」

 黒セルリアンを倒してからしばらくしたある日、かばんちゃんは博士達にとしょかんまで呼ばれます。

「ところでなんでお前までいるのです?」

「なんか面白そうだったから!」

 博士はおまけで付いてきたサーバルちゃんに、あからさまに嫌そうな表情をします。


「……はあ、まあいいのです。お前にも多少は用があるかもしれないのです」

「それまでは黙っているのです」

「はーい」

 サーバルちゃんは元気よく返事をしましたが、あまり分かっている様子はありません。

 かばんちゃんは苦笑しながら話を促します。

「それで、話ってなんですか?」


「セルリアンのことです」


 博士ははっきり言いました。

 かばんちゃんはあのときのことを思いだし、少し表情を変えます。

「フレンズの安全のために、セルリアンの事をもっと詳しく知っておく必要があるのです」

「確かにそうですね」

「それではさっそく。我々フレンズの共通認識として、フレンズに食べられたらサンドスターを失い、記憶もフレンズの姿も失うとされています」

「我々も動物に戻ったフレンズは、何回も見てきました」

「ですがかばん、お前はフレンズに食べられましたが、姿は変わりませんでしたね」

「正確には玉のようになりましたが、結局元の姿に戻ったのです」

「はい」

 かばんちゃんは頷きます。

「アライグマの話では、お前は元々ヒトの髪の毛でしたから、髪の毛になるはずです」

「ですがお前はヒトのままでした。まずこの理由が分からないのです」


「そうですね。これはあくまで推測で証明する方法も無いんですけど……」


 流石にかばんちゃんも、また同じ目に遭おうとは思いません。

 次は無事でいる保証もないのですから。

「直接生きている状態で当たったフレンズと、ぼくみたいに一部分だけのフレンズは、戻り方が違うんじゃないでしょうか。逆に聞きますけど、ぼくみたいに一部分に戻ったフレンズを見たことあります?」

「ふむ、そう言われるとない気がします。助手は?」

「博士と同じです。ですがその考えだと、かばんが何人も増える可能性があるのです」

「かばんちゃんがたくさん!? すごーい!」

「お前は黙っているのです」

「ふごふご!」

 助手が強引にサーバルちゃんの口にジャパリまんをつっこみます。


「それ以外にも数の問題として、動物以外からフレンズになるより、動物からフレンズになる方が圧倒的に多いのです。サンプル数が限られるので、確認は難しいのです」

「まあこの話もこれ以上しても推論止まりでしょうね。博士、次の話題に移りましょう」

「そうですね助手。次は記憶に関する問題です。我々はほぼ事実としてセルリアンに食べられたら記憶を失うと思っていました」

「サーバルはすぐに助けられたから、記憶を失うほどでありませんでしたが」

「もぐもぐ……ごくん、あの時はありがとうねかばんちゃん」

「どういたしまして」

「しかし、かばんはあそこまで溶かされたにもかかわらず、しっかり記憶がありました。これは我々の認識が間違っていたのでしょうか?」

「それともかばんだけが特別なのでしょうか?」

「……そのことについても少し思いついたことがあります」

「興味深いのです」

「言うと良いのです」

 博士と助手も真剣になって話を聞きます。

 サーバルちゃんはほとんど意味が分かりませんでしたが、とりあえず真剣な顔をしてみました。

「そもそも矛盾しているんです。なんで話せなくなったのに記憶を失ったことが分かるんですか?」

「……言われてみればそうなのです!」

「盲点だったのです」

「つまり動物に戻っても、実際は記憶を失ってはいないと思うんです」


「はいーはーい!」


 サーバルちゃんが突然手を上げます。

 博士と助手は「またですか」嫌そうな顔をしました。

 しかし、かばんちゃんは律儀に「どうしたのさーばるちゃん?」と反応してあげます。

「私フレンズから動物に戻ってまたフレンズになったお友達いたけど、私のことすっかり忘れてて悲しかったよ」

「びっくりなのです……」

「サーバルがまともなことを言ったのです……」

「ひどーい!」

「そうだね……」

 かばんちゃんは少し考えてから答えます。


「動物だった頃の記憶は皆さんありますよね。さっきの話を前提に考えると、動物だった頃の記憶は引き継がれても、フレンズだった頃の記憶は引き継がれないのかもしれません。ああ、でもそうなると結局記憶を失うってことになるのか。ぼくの記憶が残っている説明にもならないしなあ」

「かばんちゃんすごーい! 頭いー!」

「結局何一つ分からない、ということですか」

 博士はため息を吐きます。

「頼りなくてすみません」

「仕方ないのです。すぐに分かる問題なら、我々がとっくに解明しているのです。我々はかしこいので」

「まあ今日の話はその足がかりが分かっただけでも、ほめてやるのです。むしろ今ここにいて、サーバルより役に立たなかった奴がいるのです」

「だれだれー!?」


「それはこれだけ話して、なおかつパークの運営により関わっているのに、一言もしゃべらなかったラッキービーストです」

「本当にポンコツなのです」

「アワワアワワ……」


                                  おしまい

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セルリアンに対するいくつかの考察 けものフレンズ大好き @zvonimir1968

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