フォトン


 光が嫌いだ

 それは鮮やかに世界を照らし出し

 あちらこちらに満ちるのだ

 まるで僕の居場所を奪うように

 まるで僕の形を掘り起こすように

 ありとあらゆる場所に彼は居座るのだ


「私がいないと君は何も見えないよ」

 そんな風に彼は主張する

 それは事実だ

 耐え難い事実だ

 僕の精神世界の中にすら

 彼は侵食している


 光のない部屋がいい

 真っ暗な部屋がいい

 そこでなら僕は己の体を

 内側でだけ感じることができる

 彼からの刺激に頼らなくてすむ


 完全な闇の中では

 目が闇に慣れても何も映らない

 けれど心が闇に慣れたなら

 指先から体が闇に融けだして

 小さな息づかいを

 ひっそりとした胸の鼓動を

 僕は想うことができるだろう

 僕が世界を満たすだろう


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