第37話
【俺の妹になってください】
三十七話
〜 あらすじ 〜
柏木と三ヶ森さんの好きなやつが山口だと知ってしまい、どちらを応援するか悩んでいるところに姉とかいう爆弾が突っ込んできて……もう、てんやわんやだったが、なんとか鎮火した。
******
色々あったが、とうとう八月が終わった。
それと同時に長かった夏休みが終わるということでもある。なので、今日から学校だ。学校ってのはやっぱり憂鬱だな。
「春樹。おっはよーっ!!」
と、ドアをぶち破る勢いで馬鹿な姉が俺の部屋に飛び込んできた。
「朝からうるせぇっ!!」
そんな姉にの腹辺りに一発鉄拳をぶち込む。
「ありがとうごさいますぅ!!」
あの日以来なんでか姉は殴られるのにハマったらしく、毎朝こんな感じだ。
最初は殴った後、やりすぎたかな?なんて考えてしまっていたが、今はそんな気微塵もない。姉が痛かろうと痛くなかろうと知ったことではない。むしろ痛いほうがいいらしいし怒りのままに殴っている。そんな日々を送っていたからか、この朝パンチで一日がはじまったなぁというほどにそれは溶け込んでいた。
それから身支度を整えて約一ヶ月ぶりの学校に着いた。
学校の奴らは「おお、久しぶりー」とかやっているが、俺はまあ、そんな友達はいない。
「おはよ」
俺なんかに話しかけるのは柏木くらいだよな。
なんて声を掛けられたの方を向くと見知らぬ人が居た。
「あー。えっと………」
「本当にあんた忘れっぽいわね」
なんて言いながら俺の隣に腰掛けて笑った。
「一ヶ月しかない夏休みで人の顔を忘れるなんて失礼ね」
「こんにちは。風見さん。橘………さん」
俺がどうにかしてこの横のヤツの名前を思い出そうとしているところに、今度は見知ったイケメンが来た。
「あー。橘さんか」
「……………」
なぜか橘さんは急に黙り俯き、不機嫌そうにスマートフォンを弄り始めた。
「……なんかあったのか?」
橘に聞こえないように小声で山口に訊くと、微笑んで「なにもないですよ」と、言った。
「そう……」
まあ、深く踏み込みすぎるのも良くないし、気にすることないか。
チャイムがなってから担任の気だるげな教師がやってきた。いつにも増してやる気がないがやることはしっかりやるのである。指示通り課題は出した。
これで夏休み中の補習に行かなかったのチャラにならないかな。なんて思いながら数学の課題を提出する時、パチっと手首を掴まれた。
「な、なんだ!?」
「よう、久しぶりだな。風見春樹くん?」
「あ、先生久しぶりです」
「……わかってる。よね?」
「さぁ、なんのことだかさっぱり………」
「ほうほう。そうか。数学の単位を落としてもいいと君はそういうんだね?」
「は?」
「ならいいんだ。私はここで帰るよ」
………ちくしょう。先生手がきたねえぞ!!
「………ご、ごめんなさいっ!」
「なら、放課後居残り覚悟しておけよ?」
「は、はいっ!!」
そして、放課後。
「はい。これな」
と、渡されたのはかなり重いプリントの山だった。
「こ、これは?」
「授業で使うプリント。これ、あと三十セットな」
「なっ!?」
「じゃ、やっとけよー。」
そう言って気だるげに先生は涼しい職員室へと帰っていった。
流石にこれは酷いな………
それから三時間。職員室から三階の空き教室まで全部運ぶという鬼畜ミッション汗だくになりながらもようやくクリアし自由の身となった。でも、これで単位は一応確保したしいいか………
「本当になんなの!?まじウザイんですけど」
そんなことを思いつつ教室に帰ってるとそんな声が教室から飛んできた。
「だ、だからあれは………癖というか…って、説明したじゃねえかっ!だからそろそろ昔に戻ろうぜ?」
隠れる必要は………無いわけないか……
こんな喧嘩よそでやってくれよ。帰りが遅いと姉さんに追求されるから面倒臭いんだよ。
なんて思いつつ教室の中を覗くと山口と橘だった。
………なに……やってんだ?
こんな中に入れるわけもなく、かと言ってバック教室の中だし終わるまで行けねえか。
「そんなの無理。あんたなにしたか覚えててそんな事言ってるの!?」
「だから、あれは癖というか……だからもう告白されてもやってねえって言ってるじゃん。だからあれは水に流してくれないか?」
「………そんなの知らないし。もう、昔には戻れないから………」
盗み聞くつもりはなかったが、なんかやばいの聞いてしまったのかもしれない。
そうして、
やべ。こっちに橘が来る。
俺は廊下を一気に走り抜けてトイレの個室まで逃げ込んだ。
よし、多分大丈夫。これで五分くらいこもってから教室に行けば問題ないな。
そして五分後、戻ると山口がひとりぽつんと教室にいた。
「よ。」
一言だけそう言って教室に入るが、こちらにも気づかずにうなだれていた。
よし、さっさとバック持って帰ろっと。
そんな山口を放って俺はさっさと帰ろうとしたが、机の横にぶら下がったバックを取ろうとした時にガクッと机が動いて音が鳴ってしまった。
「あ、ああ……風見か。」
「よ、よう。その……大丈夫か?」
「え?あ、うん。大丈夫。今から帰りか?」
「あぁ。そんなところだ。いくら成績が悪いからってこんな時間まで酷いよなぁ」
なんて言って笑ってみるとやつも笑ったが、イマイチの笑顔だった。
まあ、喧嘩した後ならそんなになるよな。
「じゃ、俺は姉がキレるかもしれねえしこれで帰るわ。またな。」
「あ、うん。またー」
俺は適当に誤魔化して家に即座に帰ると、姉が玄関前に立っていた。
「た、ただいまー」
「はぁ。………女か?」
こっちも修羅場かよ……
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