第36話
【俺の妹になってください】
三十六話
〜 あらすじ 〜
宿題と三ヶ森さんの恋愛を応援するためにいつもの四人で大型ショッピングモールにやって来た。そして、外で柏木と少しだけ話をした。
*****
俺ら二人が話から戻ると二人は仲睦まじい感じに話していた。
こりゃまずい。
横をふと見ると柏木はこの世の終わりでも見るかのような青ざめた顔をしていた。
三ヶ森さんが上手くいってほしいのもあるが、柏木も捨てがたいんだよな……夢だったらいいのにな。こんなこと。
ちくしょう。なんであいつはイケメンなんだっ!
でも、これは不公平だ。止めねえと。
「すすす、ストーップっ!!」
俺が二人の間に入り込もうした時、柏木が俺より早く動いていた。
「ど、どうしたんですか?」
あの空気をぶち壊して無理くり入ってったんだ。そりゃー冷たい目で見られますよ。いつも俺がその役目をやってんだから無理しなくてもいいのに。
「え、えっと…………別に……」
なんて言いながらこっちをもじもじしながら見てきた。俺に助けろだとさ。仕方ねえな。
「え、えーっと、ごめんなさい。俺がやれって言ったんです」
「んと、なぜに?」
山口がそんな素朴な質問をしてきた。
「し、嫉妬って奴?」
首をゆっくりと縦に振って、「あー」とこぼした。理解はしてくれたみたいだ。
「じゃ、四人で回りますか?宿題も終わったみたいですし」
イケメンがイケメン対応をしやがった。もう、流石ですよ。それに尽きるね。
「違うわっ!三人と二人よっ!!」
どこからか謎の声がした。そして、その後に視界が真っ暗になった。
「だーれだ?」
ぷにゃっとした柔らかい感触が背中に当たり、足にも柔らかな感触が絡んでくる。
「…………姉さん?」
「ピンポンピンポーンっ!せいかーいっ!」
すげえだるいのが超ハイテンションで来た。
「正解したのでおんぶしてねー!」
そう言って目元からするりと手を下ろして、流れるように肩に巻き付き……
「重っー!」
「お、女の子に重いとか言うなっ!!」
「し、仕方ねえだろっ!!俺姉さんより背低いし体重だって………」
俺より重いじゃんっ!と、続けようとしたところ、姉は顔では笑顔を作りながらも、その後には鬼でもいるのかそんな圧倒的な迫力があった。
「それ以上言ったらわかってるよね?」
「は、はい………」
怖い………姉さんそんなに怒らないけど怒ると笑って怒るからピエロみたいな怖さがあるんだよな……
「あ、あの、風見くんのお姉さん…………ど、どうしてここに?」
「ストーキング………じゃなくて、たまたまよ?」
「姉さん………まだ懲りてないの?」
「もうっ!いちいちうるさいの!好きな人がたまたま弟だったってだけじゃないっ!!」
開き直りやがった……
「わかった。想いがどれくらい重いのか充分あの日にわかったから。そんなことを大声で言うんじゃ……」
姉に説教をたれてると、肩に手を置かれ、思いっきり力を入れられた。
「………ねえ、風見。何があったの?」
「い、いや、襲われただけであとは特にないですっ!!」
………あ。言わなくてもいいとこだけ言っちまった。
「………そう」
柏木はあんな勢いで迫ってきたくせに怒らなかった。
まあ、あればかりはどうしようもなかったけどな。
「まあまあ、今のところはその話はいいじゃないですか。風見さんのお姉さんも来たんですしみんなで色々回りませんか?」
「俺はいい」
と、肯定しようとしたところに被せるように姉が「いや、ダメよっ!」と、封じをかけてきた。
「なぜに?」
「そりゃーデートしたいに決まってるからでしょっ!!」
やべえ。姉さんマジパネェ。
「それはダメーっ!!」
柏木がこれまでにないってほどに咆哮した。
「………ま、まあ、そうだな」
ここはショッピングモールなんですよね。そんなに叫んじゃうと周りからの目が痛い。
「う、うん………でも、静かにね」
そりゃーいくらイケメンくんでもそういうよな。
「だ、だって………風見は………美柑ちゃんと回りたいみたいだし?」
「………は?」
意味のわからないことを言い始めた柏木に返す言葉もなかった。
「そ、そうなんでしょ?」
顔を真っ赤っかにしてそういう柏木が新鮮でちょっとだけ狼狽えてしまった。
「そ、そうなんですか?」
「え?あ、いや………」
なんで二人して同じような顔をするんだよ………これじゃ「別に」とか言えねえじゃねえか………
「まあ、みんなで回ればそれでいいんじゃないんですか?」
「ちぇー!春樹とデートしたかったのにっ!」
そんなことを言う姉に苦笑するしかなかった。
******
「なんでそんなにくっつくんだよっ!!暑苦しいだろっ!!」
腕にまとわりついた姉を振り払うように腕をふりそう言うが、姉はタコみたいに離れねえ。
「えー?別いいじゃんかー」
「姉さんは暑くねえの?」
「むしろ熱い夜を過ごしたいわっ!」
「はぁ………」
「風見っ!早くしてっ!」
俺が頑張ってこのアホを剥がそうとしてるのに、勝手にみんなは先に行って罵倒。酷すぎやしませんかね?
「行くから少し待ってくれって、姉さんっ!どこ触ってんだよっ!!」
「え?ちん………」
「言わんでよろしいっ!!」
こいつマジ頭のネジが四、五個ぶっ飛んでるんじゃねえかな……
そんなで歩くだけでも一苦労であったが、女子達の希望の洋服屋に着いた。
「これとか似合うんじゃない?」
「えー。私にそういうのは似合わないですよー」
「こういうのはどうですか?」
「さすが山口くんセンスあるねー!」
なんて三人の仲睦まじい光景を横目に俺はこの俺の腕に巻きついている馬鹿な姉をどうやって処理するかを考えていた。
「ねーねー。春樹ー。私にはどういう服が似合うと思う?」
「あ?知らねえよ勝手に選べ」
本当に二人と三人になっちまったじゃねえか。
「冷たーいっ!なんでそんなことを平気で言えるの?」
「うるせえっ!!」
つい、怒りのあまりに姉を突き飛ばした。
「あ…………ごめ……」
と、言いかけたところで姉が不気味に微笑みかけてきた。
「わかったわ。乱暴なのがすきなのね?襲われるより襲いたいのねっ!!なら、いいわよ。ここでしてっ!!」
「は、はぁ!?」
「無茶苦茶に私をぐちゃぐちゃにしたいんでしょ!?さぁ、早っ………ぐぅぅ………」
もうこれ以上こいつにこんな公共の場で喋らせてはいけない。
腹パンされた姉は気を失い、でも、なんだか妙に嬉しそうな顔をしていた。
「ごめん。みんな先帰っていいかな?」
姉を担ぎあげて楽しそうなみんなに一応確認をする。
「そうね……お荷物があると大変だものね」
「風見も大変だな……気をつけて帰ってな。」
「色々と頑張ってくださいね?」
色々な心配をされたが、そんな言葉は一ミリも入ってこなかった。
俺はその場を即座に離脱して姉を担いで家に帰った。
「んふふ……春樹……そこはらめぇ………」
こいつ。どんな夢見てやがんだよ……
でも、幸せそうだから憎めねえんだよなぁ。
なんて思いながら緩みきった顔をした姉の頬をつねって遊んでいると姉がうっすらと目を開いた。
「んぁ?春樹?」
「あ、ごめん。起きちゃったか?」
「なんで家?確か………」
「姉さん。それは夢だ。俺が帰ってきていたらもうそこで寝ていた。」
「え?だって」
「夢だ」
「そ、そう………」
夢ということにしておけば、俺の腹パンも思い出したところで夢ってことになるしな。これで完璧だ。
「姉さん。その夢で俺のことをストーカーしたりしてなかった?」
「ギクッ!」
初めて見た。こんなに露骨にわかりやすい反応をするやつ。
「はぁ。リアルでやったら警察を呼ぶからな?」
「は、はい……」
反省の色は見えるしまあ、今回ばかりは夢ってことにしてやるか。
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