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国道はほぼ直線で、崩れて砂のようになった星が発光して手の込んだイルミネーションのようになっていた。街灯は消えていたが延々と続く道が地上に降りてきた天の川のようで、地の果てまで続くように見えた。風が吹くたび、星の粒子が砂埃となって舞い上がり、視界が悪くなった。日が傾いて街灯がついていなくとも、星が足元を照らしてくれた。森と高橋は二人で星をよけつつ歩いていく。散らかった部屋の中、床の露出している部分を渡っていくときのようだった。森とは久しぶりに会うのに、いくらでも話したいことがあるはずなのに、何を言えばいいのかわからなかった。森との最後の会話はケンカだった。ほとぼりは冷めたといえるかもしれない。しかし大災害の雰囲気に妙に神経が昂ぶってどうしようもなく、興奮が空回りして肺が苦しかった。空は曇って暗かったが、降ってくる星が光って見えた。森が口を開いた。
「星、どこまで降るんだろう」
「いま星の話するの?」
「ああ、ごめん」
森は足元に集中するそぶりを見せたが、また高橋の方を見た。
「うちもああなった、とはさっき言ったか。ここに落ちてる星も、もともと何かだったのかねえ」
「月でしょ、たぶん、ほとんど、ねえ、仕事は最近どうなん?」
「誰とも連絡つかないよ、お手上げ」
「会社行った?」
「家が近い人は行ってるかもしれないけど。電気付かないし、きっとなんにもできないよ。君は?」
「外には出てる、けど、なんか、昨日までのことがあんまり思い出せない」
二人は長いこと歩いた。森はたまにスマホを取り出して道を確認するが、特に向きを変えることはなく、まっすぐな国道を進み続けた。
「森、これさ」
「何?」
「ここから近い?」
「近くはない、けど歩いてはいける。この調子なら」
「月ってどんなとこ?」
「わからん。」
「わからんところに行くの? インターネットにはなんて?」
「まあ、行こうよ、楽しみじゃん」
「手でもつなぐ?」
「や、いいよ」
「駄目ってこと?」
「そう」
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