本能に勝てなかったタイリクオオカミさん

@zatou_7

オオカミさん、大いにはしゃぐ

ロッジで新作の漫画の執筆を進めていたタイリクオオカミ

ここの所イマイチ筆の進みが遅い

「うーん・・・うーん・・・」

「先生ここの所さっぱりですねぇ」

「いいアイデアがでなくてねぇ・・・」

真っ白の原稿をアミメキリンと眺めていると外のほう気配がした

オオカミの耳がピクピクと反応する

「おや?誰か来たようだね」

「誰でしょう?」

「ちょっと見てくるよ」

「あ、先生!」


筆も進まずちょっと気晴らしがしたかったオオカミは勢い良く外に飛び出し

気配のあった方向へ走っていった

「この匂いは・・・おーい!カバン!サーバル!」

「あ、オオカミさん、こんにちは!」

「オオカミさんだー!漫画の調子どう?」

「ああ、それがあんまり筆が進まなくてね…ふたりとも今日はどうしたんだい?」

「港の方に行こうと思ったんですけどちょっとオオカミさんのところに寄って本の様子がみたいってサーバルちゃんが言ったんですけど…」

「そういうことか、いやーすまんね」

「調子良くないならしょうがないね・・・そうだ!じゃあ一緒に港に行ってすこし遊ぼうよ!気分転換すればきっとまた調子良くなるよ!」

「フフフッ…実は私も丁度そう思ってたんだ」

「じゃあ一緒に行きましょう」


オオカミを乗せて一行は港近くの海岸に向かった


「到着ー!海の匂いがして気持ちいいね!」

「寄せては返す波の音・・・心地いいな」

「じゃあこの辺でちょっと遊びましょうか・・・えーっと」

カバンちゃんは背中のカバンの中を探って黄色い円盤を取り出した

「カバン、それは・・・?」

初めてみる円盤、初めて見るのに何故かオオカミの心が踊りしっぽがフルフル震えはじめた

「あ、これですか?この前拾ったんですけど、サーバルちゃんがこれで遊ぶのが好きで」

「カバンちゃんが投げるのを取り行くんだよ!ビューンって飛んでくのを取るのすっごい楽しいんだよ!」

「おおっ!それはそれは・・・」ウズウズ

(オオカミさんすごい喜んでるなぁ…しっぽすごく動いてる)

いつものクールでアダルティな表情のオオカミさんだが目がキラキラと輝き鼻息荒くしっぽは左右にビュンビュン振れていた

「それじゃいきますよー、えいっ!」

カバンが投げた円盤は空高く砂浜の上を飛んでいく

「わーい!」

「まてーっ!」

サーバル、オオカミは勢い良く砂浜を駆けていく

「えーいっ!」

「とうっ!」

同時に円盤に向かって飛び上がると

「はっ!」パクッ

空飛ぶ円盤を咥えて着地

「オオカミさんすっごーい!」

円盤をとられてしまったサーバルは目を丸くした

円盤を持ってカバンのもとへ駆けていくオオカミ

「カバン・・・もう一回だ!」

「お、オオカミさんいい顔してますね・・・」

「そ、そうか?さあ早く投げてくれカバン」

カバンの指摘に照れ隠ししつつもしっぽは嬉しさを隠せず元気に動いていた

「それじゃあ行きますよー」

「オオカミさん次は負けないからね!」

「フフフ、どうかな?」

「えいっ!」

笑顔で実に楽しげに砂浜を駆け回るオオカミは実に幸せそうだった

夕日が海に沈む頃にはサーバルちゃんとオオカミは砂だらけになっていた

「いやー、遊んだ遊んだ、もうすっかり夕暮れだな」

「オオカミさんと遊べてすっごい楽しかったよ!また遊ぼうね!」

「ああ、そうだな」

「ボクも楽しかったです」

「それじゃ私はそろそろ帰るとするよ、いい気分転換になったよありがとう」

「あ、ちょっと待って下さい、これボクが作ったんですけどよかったら・・・サーバルちゃんに作ったのがいっぱいあるんで」

カバンの中から小さな包をだしてオオカミに手渡した

「おやなんだろう、悪いね、帰ってから開けてみるとするよ、それじゃまたな」

「ばいばーい!また遊ぼうねー!」

「さようならー」


日が沈み辺りが暗くなった頃ロッジに帰宅すると

キリンがドアの前で仁王立ちしていた

「先生!どこいってたんですかもう!先生は放浪癖あるから心配しましたよ!」

「ハハハ、すまんな、ちょっと気分転換に行ってたんだ」

「それならいいんですけどー、あれ?それはなんですか?」

「ああコレか、カバンに貰ったんだ、自分で作ったらしいんだが・・・」

「カバンさんに会ってたんですか?」

「ああ」

カバンに貰った包を開けてみると柔らかく太く短いロープのような物が入っていた

「先生これは!?あ、待ってください!私の推理によると・・・これはきっと料理です!カバンさんが作ったものということはきっと噂の料理ですよ!」

「いやぁ…違うだろう、そういう匂いがしない…しかしコレは・・・」ウズウズウズ

「先生?」

握りしめたロープのようなものをオオカミはおもむろに口に近づけて・・・噛んだ

「あむあむあむ・・・」

「せ、先生!なにしてるんですか!」

「はっ!私はなにを・・・無意識のうちにこれを噛んでしまった…何だこれは」

「びっくりしましたよ!それってきっとそう使うのでは・・・?」

「そんなまさか…いやしかし…全く人という動物は妙な物を作るな…」ウズウズ


すっかり本能的な所を刺激されてしまったオオカミはその後も原稿に詰まったりするとカバンに貰ったおもちゃでこっそり遊んでいた

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