邂逅

 廊下の先はロビーと思しき場所――そこでは惨状が広がっていた。異形と人の戦いというよりも、むしろ――


「う、あああ!」


 半狂乱で魔導拳銃を乱射する若い警察官。銃口から発射されるのは、雷撃の形をとる魔弾。魔導拳銃に刻印シールされた『発射』と『顕現』の術式センテンスによって、弾丸に刻印された魔術が即座に発動される、簡易魔術インスタント。非魔術師による魔術使用を可能にする技術。


 汎用仕様の量産型術式とはいえ、犯罪者の鎮圧程度には充分。だが――相手が悪いとばかりに、黒い影が駆ける。


 火線をかいくぐり肉薄し、そのが柔らかな喉笛を襲う。


「シィ!」


 銀剣の輝きが乳白色の牙を退ける。へたりこんだ男性警察官の命を救ったのは、年若い少女だった。その瞳はヒトガタの獣を鋭く見据える。


「■■■――」


 唸り声を上げるのはヒトガタでありながら人を外れたような獣。その二足で立つ全身は白い体毛で覆われ、四肢の爪が凶悪に光る。その相貌は人間めいてしかし、獣の喜悦に歪んでいる。


 ――人狼ワーウルフ。吸血鬼の眷属たる魔獣の一種。人を喰らう獣。


「おい、さっさと逃げろ!」

「う、あ、ああ。すまない」


 クラウの指差す先には、本部棟に繋がる出入り口で固まる警察官たちの姿。密集陣形ファランクスを作るようにして魔獣たちを撃退している。一対一では獣に狩られる他ないが、集団ともなれば迎撃するだけで事足りる。


 若い男に襲い掛からんとする人狼を二三体鉄杭で撃ち抜き、彼が集団に合流したのを見てクラウは周囲を見渡した。


 ここで生きている・・・・・警察官は彼で最後だ。


「……数だけは多いな。」


 対峙した人狼を斬り伏せたシルヴィアが嘆息する。血の香りに誘われるように、魔獣たちがその周囲に集まってくる。


 どうやら、集団よりも孤立した人間の方が殺しやすいと、愚かにも判断したらしい。――魔獣がこちらに集まるおかげで、警察官たちに向かう攻撃は散発的なものに留まっていた。彼らの命を思えば、こいつらを残して先に向かう訳にはいかないだろう。



 つい先ほどクラウとシルヴィアはロビーに突入し、すぐさま生き残り警察官の救出・援護を始めた。あとはこの場の魔獣を掃討し、奥の特別房で何が起こったのかを確かめるだけだ。


「それにしても、だ」


 吼え声とともに飛びかかってくる人狼を躱して呪弾を叩き込む。脇腹を抉られつつもこちらへと振り向いた頭を銃把グリップで殴打。頭蓋が砕ける音がその絶命を伝える。


 その感触が、クラウの記憶と齟齬をきたしていた。


「こいつら――人間に近いな」


 クラウの知る限り、人狼ワーウルフはもっと狼に寄った魔獣だ。歩行は通常四足で行うし、動きはより俊敏だ。そして何より、


「顔が違うな」


 シルヴィアが決定的なことを口にした。顔色変えずに、人狼を真っ二つにしながら。



 ――ワーウルフの顔はほぼ狼のそれだ。人間のような口や目の形をしているはずがない。



 銃弾を吐き出しつくした銃を片手に、人狼と対峙する。二頭を残して人狼は全滅。もう一匹はシルヴィアを警戒するように唸り声を上げて威嚇している。正真正銘の一対一というやつだ。


 何を思ったか、人狼が口の端を吊り上げて嗤う。それは、あまりに人間じみた仕草だった。


「なんだ、武器がなくなって自分の優位だとでも思ってんのか。犬っころのくせに賢いな」


 軽口を叩くと、人狼は激怒したかのように飛びかかってきた。挑発が理解できる程度には知能が残っている・・・・・ようだ。


 高速で突き出される剛腕に軽く手を添える。軌道を僅かに変えた獣の腕は、クラウの頭を掠めるのみ。獣人が失策に気づいたときにはもう遅く、撃ち出すように放った肘打ちが、人狼の胸骨を破砕していた。


 その場で崩れ落ちるように倒れたのは、衝撃が残らずその身体を破壊しつくした証だ。付着した不可視の汚れを落とすように手を振る。人を殺すのはいまでも慣れない。


「後衛かと思ったが、拳闘も修めているのか」


 宝剣を一払いして血糊を落とすシルヴィア。その目は興味深そうにクラウを見ている。


「一人で魔術屋やる以上、このくらいはな」


 本当のことを言えば、軽く血のにじむ努力をした。が、それで天下を獲れるほど甘くないというのが世の常だ。凡人の努力は常に天才のそれに劣る。


「そういえば、私の剣戟を何回も躱していたな」


 ぎらりとシルヴィアの目が不穏な光を帯びる。いや、戦闘狂で負けず嫌いすぎないか。


「……あれはぎりぎりだったから安心しろ」


 認めるのは癪だがそこに嘘はない。彼女の剣戟の鋭さからして、真っ向からやりあえばクラウは三分と持つまい。


 それより、とシルヴィアを奥へと促す。獣の暴力に晒されたロビーを通過した先には、特別房が、この異変の正体が待っている。


 彼女の細い背中に続きつつ、クラウは振り向いた。安心したようにへたりこむ警官たちを確かめる。


 視界の端には救出が間に合わなかった人々の骸が横たわっている。意識を向ければ、あちこちに人間の紅い血痕が、肢体が、ばらまかれたように存在するのが見える。



 もしも、俺が真っ当な魔術師だったなら、間に合ったのか――。



 無意味な仮定を止めることができない。それは怨嗟の声のようにクラウを苛むものだ。今までも、多分これからも。


 逃げるように目を背けて、シルヴィアの背中を追う。無力感は元凶をぶちのめしてから、充分味わえばいい。






「……これは」


 目の前に広がる光景に、思わず声が漏れた。


 人狼たちが暴れ狂ったのだろう。通路の両脇に連なる独房は全て檻や壁が粉々に破砕され、一つの連続した空間と化している。天井には正体不明の大穴が開いており、青々とした空が広がってさえいる。


 廃墟じみた空間。天井の穴から差す陽光さえも仄暗く感じるその中心に、二人の人影があった。


 黒いローブを身にまとう人物は王のように傲然と屹立している。その顔はちょうどフードの影に隠れて判然としない。ただ一つ、古びた鞘入りの剣を腰に差しているのが目に付いた。


 その人物に追い詰められているような構図で、もう一方の男は尻もちをつきつつ後ずさりしていた。


「や、やめろ。オレは、あ、あ、あんなバケモノに」

「これはおまえの望んだことだ。そうだろう?」


 酷薄な男の声は蔑みの色を隠す様子もない。座り込んだ男は、いつの間にか魔性に魅入られたように動けない。そうしてローブの男が悠然と一歩を踏み出して――


「待て」


 クラウの声がその歩みを止めた。ゆったりとフードがこちらを向く。


「動かないのでてっきり見物客かと思ったが……。ああ」


 その目がクラウの隣にいるシルヴィアを捉えると、納得したかのようにフードが上下する。


「魔術屋か。これほど早く来るとは思っていなかったな」


 そう言って腕を一振り。たったそれだけで、石像のように微動だにしなかった男の体が崩れ落ちた。――絶命したのだと、一目でわかる。


「こんだけ派手に騒げば、そりゃ魔術屋だって来るに決まってんだろ」


 挑発がいつもより強い、と冷静な部分が自覚する。実際、クラウの頭は過熱していた。


 それはこの事態を引き起こしたと思われる者への憤りか、それとも直感が鳴らす警鐘ゆえか。こいつは危険だ、と脳が、全身が叫んでいる。昨日の刺客、魔獣化術式の男と相対したときでさえこんなことは感じなかった。


 あるいは、この男が不倶戴天の敵であると見て取ったのか。


 クラウの言葉をまるっきり無視して、フードの男は両腕を掲げた。舞台役者が天に叫ぶように。


「では尋ねよう、魔術師よ。あの人狼たちを退けた強者つわものよ」


 大仰な物言いは、邪悪な愉しみ――というよりも、陶酔した使命感のようなものを映して更に張りあがる。


「君たちは何を見た? 人狼に追い殺される警察官たちはどうだった?」


 そうして一旦言葉を切る。その問いの余韻を楽しむように。


「――無様だっただろう」息を呑む音がした。自分の喉だ。

「醜く、惰弱で、情けない。魔術などというものを得て得意になる猿を見ているのは心苦しい。貴様らがもてはやしているそれは――ゴミにも劣るというのに。魔術など、無くなった方がいい」


 それはあまりに冒涜的な呪詛だった。耳が腐りおちそうなほどの毒。


――だが、一方で思い出す。先ほどの若い警察官の姿を。魔導拳銃マギカショットという杖を遣いこなしていたなどとは、とても言えない様子を。


「だから――私は、この魔術世界を破壊する・・・・・・・・・・・

「破壊、だと?」


 そんなもの、不可能だ

 クラウが口を開くよりも早く、動く者がいた。


「黙れ、下郎」


 疾風の如く駆ける矮躯。シルヴィアは青色の影を引きずりながら男へと肉薄する。瞬く間に振るわれる銀剣は男の身体へ吸い込まれるように――


「人の話は最後まで聞くものだ」


 頸を一息に断つ剣戟は灰色の剣で受け止められていた。腰の剣は鞘に収まったままだ。では、一体どこから? フードの男は確かに無手だった――地面アスファルトから剣を構成するまでは。


 その魔術技能に目を剥く間もなくシルヴィアは次の攻撃に移った。宝剣の刀身から迸る水の奔流――『瀑剣カタラクト』。魔獣の大質量さえおしのけた一撃は、人の身には致命の打撃だ。


「……なに?」


 驚きのあまりに今度こそシルヴィアの動きが止まる。大瀑布の質量攻撃を展開するはずの宝剣はしかし、灰色に覆われていた。男の手から伸びるアスファルトの剣だったものがその刀身を包み隠し、水を封じ込めている。


 ちょうど、宝剣の鞘のように。その比喩で気づく。


 余剰空間が無ければ、水流を発生させることはできない。


相殺魔術カウンターマジック――実際に目の当たりにするのは初めてか?」


 相殺魔術――敵手の術式を看破し、それを完封する魔術を即座に組み上げる戦法。


 言葉にすれば大したことはないが、実際に行うのは不可能だ。――相手が魔術を発動するのを待ち、その構成を見てから、それに対応する魔術を相手に先んじて展開する。遥かに高い技量と魔術展開速度マジックレートを要する、机上の空論に近い技。


その利点は言うまでもなく明らかだ。魔術の起こりを潰されたシルヴィアが次の動作に移る前に、男の魔手がその貌に伸び――


 側面に回り込んだクラウの魔導拳銃が火を噴いた。


 その一撃を横目で素早く確認すると、男は大きく後方に飛び退いた。鉄杭が虚空を裂き、シルヴィアもまた後退して距離をとる。


 男がクラウに顔を向ける。フードの闇越しにさえ、強烈な視線が飛んできているのがわかる。


「……古文書にも出てこないことをするやつがいるかってんだ」

「おまえは」


 呟くような男の言葉の先は空気に溶けて聞こえない。クラウは警戒を強めて照準を敵の頭蓋に合わせる。シルヴィアは下がったまま動かない。何かされたのかと懸念が頭をよぎるが、注意はそらせない。


 無言の睨み合いを破って、男が跳んだ。魔術で強化した脚力と壁から錬成された足場が男を天井の大穴まで運ぶ。


「逃げる気か」


 後を追おうとして足場が崩れていくことに気づく。穴のふちに立った男は、こちらを見下ろすようにして笑った。


「逃げるだと? 元から貴様らなど相手にしてはいない」


 シルヴィアが魔術を構築するも、相殺魔術を恐れてか展開には至らない。男は安全圏から言葉を続ける。


「ここで私が成すべきことは終わった。だたそれだけだ」


 だが、と男の目がクラウを捉える。背筋が粟立つのを感じながら、クラウは男を睨み返した。


 男の視線は、何か不可解なものを精査するような色を帯びている。そんな気がした。


「覚えておこう、魔術屋。その些細な抵抗をな」


 そう言い残すと、男の姿が穴から消えた。肩の力が抜けるのを感じた。知らず知らずのうちに緊張していたらしい。


「くっそ、言うだけ言って逃げ出しやがって」


 悔し紛れの悪態をつく。実際、今ここで奴を打倒できたかは怪しい。クラウとシルヴィアの二人がかりでも勝率は一割あればいいだろう。


 嫌な推測を頭から追い出しつつ倒れた男に駆け寄る。生きている見込みは薄いが、何か情報が残っているかもしれない。


「……先ほどは、助かった」

「ん? ああ」


 シルヴィアが呟くように言った。いつの間にか隣に立っている。その表情はどこか暗い。


「相殺魔術なんて予想のしようがないし、そこまで気にすることじゃないだろ」


 だめだ、脈もないし完全に死んでいる。刺青の入った喉は青白く、生気が感じられない。直接この男から奴の話を聞き出すのは無理だ。


「……そうかもしれないが、私の対応が遅れたのは事実だ」


 対応が遅れた、というよりそれこそが相殺魔術という戦法の効果なのだ。相手の魔術を起こりから潰すことでタイムロスを生じさせる。剣術とかで言う後の先を取るというやつだ。


 ――ということを彼女に話しても仕方ない。

 短い付き合いではあるが、クラウもそろそろわかってきていた。シルヴィアという魔術師は、〈勇者〉を公言してやまない狂人一歩手前だが、その思考を真摯とも言える。ひたすらに自己を高めることを目指している。


 それをクラウはまぶしく思うし、一方では妬ましさやうっとうしさを感じるのだ。


 どう言おうかと脳内で考えをめぐらせていると、シルヴィアが照れたように笑う。


「あなたに、また・・助けられた。ありがとう」


 花のような笑みは少女のようで、クラウは言葉を失った。超然とした魔術師でいながら、時折可憐な少女のように振る舞ってみせる。その乖離を何と言っていいのか。


「……あー、まあ、気にするな。協力してるしな、うん」

 どうにか言葉を絞り出して、間に合わせの返答とした。何故だかこの少女は、クラウのことを全面的に信頼しているらしい、ということもわかってきた。






 雨乞い師レインメーカー――ランドッグの一族が古代より担ってきた役割とは、雨を降らせることだった。


 未だ現代魔術が生まれていなかった時代、人は呪術と宗教にすがって生きてきた。自然の物事、神の存在、人の成すこと――全てが未分化で渾然一体としていたのだ。

 技術という言葉さえあったか怪しい時代では農村こそが人々の住処。その農業を成り立たせるためには、自然の恵み、雨が必要だったのだ。



 そうして、呪術を駆使して雨を呼ぶ雨乞い師の一族は次第に大きな権力を得ていった。ランドッグという家系は、その一つだったとか。王族との血縁さえあると言う。その子孫であるシルヴィア本人としては、そんな実感はない。大領地が存在するとはいえ、ランドッグの力は弱まっているからだ。


 何故――色々な学者がそれについて議論しているのを聞いた。民主化の流れだとか、自由と平等だとか。でも、あまりしっくりこない。それは、シルヴィアが魔術師だからかもしれなかった。



 百年以上も前に、現代魔術の基礎は築かれた。『魔術言語ルーン』の創設という形で。


 自然や神と未分化で渾然とした「呪術それ」を分断し、完全に人のものへと設定し直した。世界を分節し、再解釈する業。ゆえに現代魔術の術式を成す素材ものは魔術言語・・と呼び表される。


 かくして。呪術師のみが認識できた〈まじない〉は、誰にでも読めるものへと翻訳され、現代魔術は普遍化した。


「つまりは、そういうことだ」


 呪術という神秘は大衆的なものへと零落した。貴族という古くからの家系が持つ特権は薄れつつある。わざわざ雨など降らせなくても、魔術を使えばいくらでも畑を耕せるのだから。


 だからこそシルヴィアはロンドニドムスにやってきた。倉庫に眠る宝剣を携え、代々伝わる秘儀を現代魔術に適用させ、魔術屋となった。


 〈勇者〉という形で魔術師としての名声を得ることが、死につつあるランドッグという家を甦らせる唯一の手段だと考えた。


 ――そうして一心不乱に走ってきたのは、あの背中に追いつくためではなかったか。微睡の中でときたま夢見るあの背中。何年も前にわたしの命を救ってくれた――。


「……起きなきゃ」


 柔らかなベッドで寝ているとどうも起きづらくていけない。色々と考え事もしてしまうし。


 勇者たるもの、寒さに負けていてどうするっと自分を叱咤してなんとか外に這い出した。


 ロンドニドムスに来てからは自分で朝の身支度をすることがほとんどだ。実家の屋敷にはたくさんの召使メイドがいるけれど、こちらの別荘には一人しか連れて来ていない。母様は最後までシルヴィアの先端都市行きを反対していたなぁと、クスリと笑いがもれた。



 母様はシルヴィアの父が幼い頃に死んでから、めっきり笑わなくなった。貴族の家を継ぐ者として、シルヴィアを厳しく教育しようと思っているのだ。

 ――あの優しい笑顔をもう一度見たいと思う。そのためにも、シルヴィアはロンドニドムスへとやってきたのだ。



 身支度を済ませて魔術屋としての装束に着替える。背丈ほどもある大鏡で身だしなみをチェック。この装束を着ると、自分ながら雰囲気が引き締まるのが勇者らしくていい。


 ふと、わずかな眉間のしわに気づく。思い出すのは昨日の戦い。


「……」


 クラウの横槍で一命をとどめた後、シルヴィアはいつものような攻勢に出ることができなかった。脚が動かなかったのだ。


 恐怖していたのだと、理解はしている。明確な死の気配が、あのときシルヴィアの身体をがんじがらめにしたのだ。


 今まで、魔術屋活動を始めて数か月、死を感じたことがなかったわけではない。事実、魔獣化術式を使うあの大男と闘ったときも、死を覚悟していた。


 決定的に違ったのは、多分実力の差だ。魔獣化術式ブルータライズならば打ち破る見込みはあった。運も絡むが、シルヴィアにも勝ちの目はあったはずだ。


 だが――あのフードの男を前にして、シルヴィア一人で果たして勝てただろうか。敵手の魔術を完封する相殺魔術カウンターマジックを前に、シルヴィアが、魔術師が、何をできるのだと言うのだろう。


「……勇者としては、乗り越えるのにふさわしい壁だ」


 不敵な笑みを鏡の中の自分に作ってみせる。恐怖を感じる? それがどうした。

私は勇者になる。そのためなら、どんな障害も乗り越えてみせる。


「それに、頼れる仲間もいる」


 冗談まじりに呟く。多分、本人には気恥ずかしくて言えないだろうから。




 クラウ・アーネスタはシルヴィアの命の恩人であり、魔術屋を志した理由なのだから。

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