真 1 俺が何をしたっていうんだ……
―――可笑しい。俺、東野真ははつい先ほどまで高校で怒られない程度にさぼりながら授業を受けていたはずだ。それなのに、今は視界が訳のわからない物に覆いつくされている。まるで、人間の五感にはそれを受け入れるだけの器がないような、本能的な拒絶か若しくは生理的な嫌悪とでもいうべき光景が広がっている。
……今の感覚を一言でいうと、「恐ろしい不快感」だろう。五感の大半が生理的な嫌悪を感じていて、ぼうっと意識だけが置いてきぼりにされてるような感じだ。
不安、憂鬱、剣を、怒り、苦しみ、悲しみ、憎悪、怠惰、嫉妬、劣等感、拒絶、絶望、諦め………負の感情が体にこみあげてくる。そしてそいつは甘美な声で「楽になったほうがいいんじゃないか」と囁いてくる。かつての黒歴史なども無駄に思い出し、心をえぐる。
……あれは小学校高学年、修学旅行の時。テンションが無駄に高かったバスの中。旅館で抑えきれなくなったそれは行動として現れた。風呂の時間。俺たちはある種異常なほどの興奮状態にあった。悲しきかな、大半の人間は「特別」な状況に興奮し、踊らされるのだ。勿論、それは理性で抑えることができよう。しかし、子供はより、本能に忠実なのだ。クラスの調子に乗った輩が、屋外にある露天風呂の柵を上って例の場所に特攻した。途中まで我関せずを貫いていた俺だったが、その時は周りに流され……ああああああああああああああああああああああああああああ!うわああああああああああああああああああああああああああああああああ!頼むから思い出させないで!!!!死にたい!!この世から消えてなくなりたい!!あの時はどうかしてたんだああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
……死にたい。もうやめてくれ。そう、あれは中学二年生の時。絶賛中二病だっあああああああああああ!!tがygっふぃうvっああああああああ!!!!!!!!やめてええええええええええええ!!!!
☆しばらくお待ちください☆
―――――なんだこれ。感覚はげんなりするし、心は削られるし、無駄に鬱になる。うん、最悪だ。心を折るためだけにあるじゃん。さっきから気になってたけど、体からもボキィ!!グシャァ!!ブチブチブチッッ!!!等の恐ろしい音と同時に、強烈な痛みを感じる。……心が折れない程度に。
もうやめたい。終わりたい。この感覚から気を紛らわすためにエロ方面のことを考えようとしたが(性欲だけがほかの感覚よりも強いから、この状況もそれでどうにかなると思った)ムリゲーでした。例えるなら、全力疾走をしているときにそっち方面のことを考えているようなもんだ。I‘TS賢者タイム!!唯一の武器?さえも聞かないなんて……
諦めてとにかく数を数えてたけど、十万ぐらい数えたところから、やめた。まさか、現実で〇億年ボタン(か、それ以上に酷くね?)を体験するとは……本当に死にたい。心を自分で折りたい。
でもそれはできない。しようとしても、まるで何かから守られているように心はそれを拒絶する。やらないのではなく、やろうとしてもできないのだ。無間地獄じゃん。
俺が何をしたっていうんだ。このしがない高校生の俺が。
「もうやめてくれ――――――!」
……一人の高校生の悲痛な叫びは、こだますることも無く静かに深淵へと消えていった。
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