突然
学校に到着してマコトはいつものように支度を整え席に座り、本を取り出した。
もともと本が好きだった真だが、中学の時にいじめられてからはさらにどっぷりとつかっていた。
中学校の時はプライドか何か(中二病か)知らないが、気取って哲学の本や、経済学、純文学とかに手を出していた。しかし、高校になってからはそんなプライドなんかかなぐり捨て、どうせ自分に読解能力なんかないんだと割り切り、普通の小説しか読んでいない。
そして、今マコトはライトノベルにはまっていた。
取り出した本は、ライトノベルで題名は、「ちょっと異世界行って来たんだが何か質問ない?」二巻だ。
……ラノベの典型的な題名だろう。
ストーリーはというと……
自宅警備員で、高校中退、就職失敗、おまけにDTの
そんなゴミだが、ある日自宅で震度7の地震が起こり、200㎏爆弾が撃ち込まれ、自宅に隕石が落下、持ち前の豪運で奇跡的に生き残るが、最後に魔法陣のようなものでレーザーを打たれ死んでしまう。
気が付くと白い部屋にいて女神さんに「あんた死んだよー」とか言われ、スキルやらステータスやらがある剣と魔法の世界に転生することになった。勿論チートスキル付きで。
容姿とかの設定をして準備完了と思い、女神さまにそのことをつたえると、テキトーに、なんかやばそうな洞窟に投げ出されてしまった。
しかし、持ち前の豪運を駆使して(要は運任せのクソゲー)ゴミは異世界で平穏な(以前のような惰眠をむさぼるような)暮らしを目指すこと、DTを卒業しハーレムを作ることの2つを目標に、ゴミは今日も異世界を縦横無尽に冒険する!!!
……という感じのコメディタッチな作品だ。表紙には「273万PV突破!」とか、「4万部突破!大幅増刷!」とか中途半端でいまいち決定力にかける言葉が並んでいる。
アニメの主人公とかには興味がなかったりする俺だが、時々ふと思ってしまうことがある。
……もし、異世界に転生することができたなら…と。魔法があるのなら、性欲を抑える魔法もあるかもしれないし、何より見るものすべてが新鮮そうだ。
まあ、不可能なことはわかりきってるんだけどな。
気を取り直して俺は本を読もうとした。すると、
「よう、マコト。今日もかわいいな。」
とかふざけたことを言っている奴がいる。
こいつは、
このクラスの一通りに告っては玉砕してから(殆どの人に『好きな人がいる』とか言われた。)、なぜか俺に気持ち悪いことを言うようになってきた。
とりあえず適当に言い返す。
「朝一番のあいさつがそれかよ。」
「しょうがないだろ。マコトはかわいいんだから。」
文面だけ見れば俺の名前のせいか普通に聞こえるが状況は異常だ…。
「このクラスには男色なんか入る余地がないほどの美人ぞろいじゃん。お前が真正ならともかく、女子をあきらめてまで男子にせまる程か?五大美女なんて言葉もこのクラスにはあるしな。」
「俺は、手に届かないものよりは手に届くものの方が良いタイプだ。もう、三大イケメンなんかにうつつを抜かす女は諦めた!そしたらどうだ。近くに性格がよくて容姿もいい、なおかつ好意的なやつがいるじゃないか!…灯台下暗しってやつだな。彼女を作るためなら俺は性別なんて壁、超えてみせる!マコト、つきあってくれ!!!!」
駄目だこいつ。その熱意を言う相手を致命的に間違えてる。
実は、言われたことに自覚はあったりする。容姿はほかの人と比べると中性的かもしれないし(いじめられた理由でもある)、明るくふるまっていると自分でも思う。但し、性格と好意は昔いじめられたせいで人付き合いを慎重にしてるせいだし、容姿はそんなにもいいものではないと思うのだが。
これ以上かまっていたらきりがない。そう考え、西田を無視して前を向く。すると、
「おはよう、マコト君。」
とかわいい声。このクラスの五大美女のうちの一人、
友達といえるかもしれないが、俺には高嶺の花だろう。
そんなことには関係なく俺には彼女を持たない諸事情があったりする。まあ、相手から告白されたら別だけどな。
「おはよう、水野さん。」
なるべく波風をたたせたくないので短く返事をする。何故って?昔から美人というものはフラグの塊なのだ。
「水野さん、そんな辛気臭い奴と話さずに僕と話そう。」
…どうやら恐れていた事態がおこってしまったようだ。
横やりを入れたのは、このクラスの三大イケメンの一人、
少々強引な性格だが、モデル顔負けのルックスでしかもサッカー部のエースときた。大企業の御曹司なんて噂もある。こんなゲームに出てくるような奴が女子に人気がないわけがないだろう。
「で、でも私はマコト君と…」
「君の隣にはぼくしか似合わないよ」
あいつ、スイッチはいったな。周囲が聞くだけで痛々しい発言だが、イケメンが言うと違和感がなかったりする。
そのとき。
「きみたち、もうホームルームの時間だから自分の席に戻って。」
これは、このクラスのクラス委員、宇賀神うがみ 征史せいじの声だ。
彼を一言で表そうとすると、どうしても「完璧」や、「傑物」といった類の言葉しか思いつかない。性格、成績、身体能力、育ち、容姿、人徳……欠けた要素が見つからない、三大イケメンのひとりだ。羨ましすぎる。
異世界に転生したらあんな奴になれるのかな…
なんてあいつを見たら思ってしまう。
それから少したって。
学級担任の香かおり先生の授業の時間。
「ここは…………ですから……」
黒板の真ん中あたりに板書が差し掛かったところで、突然先生が筆を止めた。
「あれっ?黒板ちゃんと消しましたかー?ふしぎな模様が書いてあるのですが…先生は怒らないので誰かやった人いませんかー?」
香先生は、ド天然だ。勿論自分では気づいていないが。どれほどかというと、自分の眼鏡をおでこに乗せたまま「眼鏡を見かけた人いませんかー?」とか言ってるレベルだ。そんなところがまた、生徒たちに気に入られていて生徒たちにはかおりん先生とか、かおりんとか呼ばれている。
そんな先生が言ったことなので、みんな冗談か見間違いだと思った。
……黒板の全体に魔法陣のようなものが出てくるまでは。
途端、魔法陣から光があふれ、俺は光に包まれるように意識を失った。
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