召喚されたはいいが失ったものが大きすぎるんだが。

ろくなことないひらだいら

プロローグ

「勇者たちよ、この世界を救ってください!」



 異世界に召喚された事実を呑み込めない俺たち、2年2組に放たれたのは、そんな一言だった。


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 これといった特技はない。勉強も、頑張っても上の下ってとこ。

身長は少し小さく、顔もそんなにいいわけではない。


大体のことはやれるが、極めたものには敵わない。所謂、器用貧乏ってやつだ。

スクールカーストもいつも真ん中。友達はいるが親友と呼べるほどではない。

可もなく不可もない感じで、毎日を何となく生きていて17年が過ぎた。


 つまらない人生だなって自分でも思う。でも、考えたって何が変わるわけでもない。

 しかし、そんな俺には、他の人とは違うところが一つだけあった。それは……






 性欲絶倫なことだ。それこそ、病気を疑ったほどだ。

中学の時容姿とのギャップで、クラスの派手なDQNにいじめられたので、高校でははほかの人には言っていないが。


 確かに、見た目が平凡……もしくは少し女よりの容姿なのにそんなことを隠している俺は恰好の標的だったことだろう。ましてや、相手は思春期真っ盛りの男子中学生だ。軽く話した俺が馬鹿だった……



 ほかの人とは違うかもしれない。しかし、ないほうがまだましの能力。

英雄になれるとか、科学の最先端を突っ走れるとか……そんな能力ではないのは見ての通りだ。




しかし、それぐらいしか、ほかの人と違うことがないのだ。


さらに言えば、そんな違い、無くても何も変わらないし、はっきり言っていらないものだ。



英雄願望や、中二病的な設定なんていらない。


漫画やアニメの主人公になんかならなくていい。


そんな違いがある位なら、平穏な毎日を過ごしたい。それが平凡な俺のたった一つの願い。


 そんな願いが叶ったのか、高校では平和な日々が続いていた。

今日も、明日も、明後日も、俺、東野ひがしの まことは高校で、平和に過ごすことだろう。


 俺のクラス、2年2組ははっきり言って恵まれている。

担任の先生は女性で、熱心に指導してくれている。


 しかも生徒も、男女どちらも何故このクラスにこんなに容姿が良い者が集まったのか疑問だ。男子は三大イケメン、女子は五大美女と裏で呼ばれたりしている。


中学のような、くだらないことで波風を立てるような馬鹿もいない。


 




俺は変わらない。いつものように、自分の席で授業を受ける。

 そうして、今日も昨日と同じように、くだらない日々を過ごすのだと、この時までは考えていたんだ。

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