第27話 ターニングポイント(転機)
元・牧瀬双葉な
「──ふぅ、いい湯だな、っと」
今日も協会の訓練所で実演を交えた講義を終え、家に帰ってケロが作ってくれた夕飯を食べたあと、土間の樽風呂を湧かしてお湯に浸かりながら、ボンヤリ考え事をする。
比較的(諸々の意味で)治安のよいルノワガルデ盆地内の、さらにその中でもかなり恵まれた部類に入るカクシジカの町にいると、つい忘れそうになるが、現在の“この
巨獣怪獣はもとより、それよりもっと数多く跋扈する大型獣の存在すら、一般人には脅威の一言に尽きる。それ以外にも植生・環境の激変に伴い、人類(含む、獣人、龍人)の生存圏は、大異変が発生する以前の10分の1以下に狭まっているのだ──まぁ、人口の方も、それに比例して最盛期の1割程度に減少しているわけだが。
そして、耕地が限られているうえに窒素系化学肥料などが手に入らないこの環境において、爆発的に収穫量、ひいては人口が増えることはおそらくない。「産んで、増えて、地を満たす」人間という種の長所が活かしづらい環境であることは間違いないだろう。
無論、ゲームのタイトル通り、
開拓失敗の原因の7割以上は──“巨獣怪獣への対処の不備”だ。
逆に言えば、周辺に出没する強力な巨獣や怪獣に対して適切な処置さえできれば、人類の生存圏を少しずつでも押し広げていくことができるはずなのだ。
そして“だからこそ”この世界に於ける狩猟士、特に上級以上の狩猟士は、庶民のみならず貴族や場合によっては王族すらからも一目おかれ、狩猟士協会はかなりのアドバンテージを与えられている──と、これは
(しっかし……魔王率いる魔族軍を斃すRPG的ファンタジー世界じゃなくて、気楽(?)な狩りゲーの世界に来たはずなのに、結局やることは「人類世界を救うための
まぁ、古典的RPGと違って「
無論、その「救世主はひとりじゃない」という状況に甘んじて、自分は何もしない……いや、ニートになるワケじゃなくて、ほどほどに狩りや指導はするつもりだけど、あくまで“ほどほど”、“安全圏”に留めて暮らしていくというのも、ひとつの生き方ではあるだろう。
でも……。
「ニャーに、難しい顔して考え込んでますの、このヘタレ
!
懐かしい声に驚き、目の前──ではなく、だいぶ下の方に視線を下げると、そこには見覚えがあり過ぎる程ある一体の
オレンジに近い体色の虎猫に革の
「ま、まさか、カラバ、か!?」
「まさかもニャにも、わたくし以外にこれほどの
* * *
いやぁ、
もちろん、あの子──立猫族の
名目上は「実績解除(今回は「教え子が100人を越えた」です)のご褒美」ということになっていますが、それは半ば口実で、少々見ていて歯がゆかったものですから、積極的に
加えて、ケロくんはもちろんイイ子ですが、リーヴ嬢が本格的に上級向け巨獣に挑むなら、より戦闘向きの支援役がもうひとりいた方がいいだろうとの判断もあります。
ええ、そうです。
小市民な堅実主義者でありながら根が善人なせいか、
無論、そんなコトはありません。
これが、たとえば「街に
なにせ、狩猟士の世界は基本的に自己責任ですし、
とは言え、
あのツンデレ猫さんが、煮え切らない
ひとりに絞って押し付けるのは、性格などが合わなかった時マズいですし、あくまでリーヴが自分の意思で相手をを選べるように、何人か候補を見繕って、双方さりげなく誘導して……。
さぁ、忙しくなってきましたよ!
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