外伝その4b.父母アリ遠方ヨリ来タル(下)

 “巨獣”とは、この世界の過酷さと理不尽を象徴する代表的な生物だ。

 その字面が表す通り、地球に比べて大型生物が多いこの地に於いても格別の巨体を誇るが、その大きさ自体は千差万別だ。

 元となる大型獣の2、3倍程度の小さめのモノ(それでも十二分に脅威なのだが)から、大きい方となると現代日本でたとえるなら「体育館に手足がついて動き回っているようなモノ」(形状ではなく、あくまで大きさの比喩だ)まで多岐にわたる。

 後者が相手ともなると、常識的に考えれば、人の持つ武器など鬼に対する一寸法師の針の剣よりもなお頼りない代物だと言えるだろう。

 ──そう、「(地球の)常識的に考えれば」だ。

 この世界がゲームを基にしているからか、あるいは古代の魔法のことわりとやらが多少なりとも影響しているのか、常人はともかく、素質持ちの狩猟士ハントマンが振るう武器の“力”も、どう考えても常識離れしているのだから。

 その極北が、今、おれ達(と言っても、下級組3人は逃げるのに精いっぱいで、のんびり観察してる余裕は無さそうだが)が目にしている、達人アデプト級狩猟士という存在だろう。


 「うぁはははは……ぃやぁ、ギガアシ狩るのなんて久しぶりだが、結構体が覚えているモンだなぁ」

 体格差からすれば一寸法師の針どころか蚊、あるいはせいぜいが蜜蜂が刺したほどのダメージしか与えられない“はず”の片手剣グラディウスで、マクドゥガルさんが斬りつけるたびに、目の前の巨獣ギガントアショトルが、悲鳴をあげながら悶えている(無論、苦痛的な意味でだ)。

 「我君様あなたさまヴェスパの前なのですから、あまり羽目を外さないで下さいましね」

 彼の左斜め後ろに影のように寄り添う奥方のランさんはランさんで、縁日の射的のような気軽さで軽弩をパンパンと撃っている……にも関わらず、そのほとんどが、目の前の青い巨獣の眼や喉元、あるいは脇にあるエラの部分といった弱点を的確に撃ち抜いている。それもまたギガントアショトルに少なからぬ悲鳴をあげさせているのだ。

 しかも、間合いの短い近接武器を装備しているマックさんはともかく、銃装しか身に着けていないはずのランさんも、全長20プロトを超すだろう巨獣相手に、ほとんど目と鼻の先──わずか2、3プロトしか離れていない位置から攻撃し続けているのだ。

 常人離れした度胸と反射神経と集中力、さらに豊富な経験に裏打ちされた巨獣の動きに対応するための狩猟士知識、その4つのいずれが足りなくても、数秒で巨獣あいてに叩き潰されることは間違いなしだ。


 「ね、ねぇ、リーヴさん、上級狩猟士って、みんなあんな非常識な狩猟が出来るモンなの?」

 恐る恐るロォズが尋ねてくるが、そんなワケないだろう! アレはひとえに達人級だから為せる神業ムチャだ。

 「──たとえば、私もギガントアショトルを単独ソロで狩れるか否かと聞かれれば、不可能ではない……が、それは罠や奇襲、各種錬金道具なども駆使したうえで、時間の許す限り慎重にヒットアンドアウェイを繰り返すことで、かろうじて為しとげられるレベルの難業だ」

 断じて、下級いちにんまえの狩猟士がランプヘアを叩き殺すような気軽さで鼻歌混じりに挑むべき片手間仕事クエストじゃない。

 (どーしてこうなったんだろうなぁ……)

 胃がキリキリ痛むのを自覚しつつ、この仕事──ロォズ、ヴェスパ、ノブの昇級試験の見届け人を引き受けたことを、つくづく後悔している私なのだった。


  * * *  


 さて、狩猟士ハントマンと呼ばれる職業は、ランク1から始まり、ランク10までが「新米ノービス」、11~50が「下級アプレンティス」、ランク51以上が「上級マスター」と格付けされるのは既に述べた通りです。

 ですが、新米以外の下級・上級は、そのなかでもいくつか細かい枠組みがあります。具体的には、ランク20、40、60、80がそれにあたり、それぞれのランクになるために昇級試験があるのです。

 試験と言っても、協会に指定された獲物を狩ってくるだけでよいので、新米から下級、下級から上級へ上がる際の“昇格審査”に比べると随分と“簡単”なのですが、それでもそのランクでは初見の相手が対象となるので、決して“楽”とは言えません。

 ちなみに、仮に昇級試験に不合格でも1ヵ月経てば再挑戦はできます──まぁ「心を折られなければ」という但書がつくのですが。実際、昇級試験で戦った敵がトラウマになって、それ以上の昇級をあきらめる狩猟士も、それなりの数います。昇級・昇格せずとも、現ランク相応の獲物をキチンと狩って来てくれれば、協会的には別段問題になりません(本人のプライド的にはどうか知りませんが)。

 閑話休題それはさておき

 ランク20への昇級試験の内容は「大型獣リヒザードを狩り、その素材をひとりにつき10頭分持ち帰ること」です。

 対象が巨獣ではなく大型獣で、かつ徒党での挑戦も認められているため、一見すると簡単そうに思うかもしれませんが……。


 「ぎにゃああぁぁぁ、全然減らないよぉ~」

 ギガントバフの大腿骨を素材に作られたロッドを振り回しながら、ロォズが悲鳴のような泣き言を漏らします。

 「あ、あとちょっとなので、気合を入れるであります!」

 こちらも普段の弓ではなく鋼鉄製の打槌メイスを手にして、ロォズを鼓舞するヴェスパですが、声に疲労の色は隠せません。

 「──残り4匹で、いったん波が途切れそうだ。頑張って」

 この徒党で精神的にいちばん苦労人おとななノブの口調がいくぶん堅く思えるのも、気のせいではないでしょう。

 リーヴの指導を受けて以来、堅実かつ比較的順調にランクを上げてきたロォズ達の徒党「アルバトロス」ですが、今回の試験では、初めて巨獣に挑んだ時にも勝るとも劣らない“壁”を実感することになりました……というか現在進行形でブチ当たっています。

 その壁とは──“数の暴力”です。


 今回の狩猟対象であるリヒザードは別名「蛭蜥蜴」とも呼ばれる通り、「ヒルのような表皮を持つトカゲに似た形の生物」です。もっとも、実際には蛭でも蜥蜴でもなく、ヤツメウナギなどの円口類の近縁種だと分析されています。全長は2.5~3プロト程度ですが、特徴的な口腔部の直径は半プロト近くもあり、口より小さい生物を丸呑みするほか、巨獣など自分より大きな動物の体表に食いついて体液をすすることを糧としています。

 身長1.5~2プロト程度の人間は、微妙に獲物の対象からは外れているため、“成体には”あまり積極的に襲われることはありませんが、人から見てかなり気持ち悪い姿をしているため反射的に攻撃されることが多く、そうなるとリヒザードも当然反撃する……というワケです。

 主に湿気の多い洞窟や薄暗い沼地などに棲息し、視覚は弱いが聴覚と嗅覚に優れ、暗闇に潜んで獲物を待つのが基本的なライフスタイルとなります。四肢(に見える発達したヒレ)は大した力を持たない代わりに、蛇などと同様に対象を締め付けてダメージを与えるほか、その大きな口を先頭にした体当たりも(吸血効果も含め)侮れません。

 ここまでなら、下級に昇格する程度の実力のある狩猟士にとっては、さしたる脅威ではなかったでしょう。

 ですが、それは「単体ないしせいぜい5、6体が相手なら」の話です。

 棲息条件にもよりますが、このリヒザード、大概は10数体の成体がまとまって暮らしているうえ、成育途中の幼生体がその数倍、近くにいることがほとんどなのです。

 不幸中の幸いは、メガバフズの集団暴走スタンピードなどに比べれば、同じくらいの数がいても直接的に受けるダメージは若干低めだという点ですが、生理的嫌悪感や、万が一“吸血”を受けた際の脱力感(&軽度の麻痺状態)という厄介さは、間違いなくこちらの方が上でしょう。

 さらに言うと、攻撃力はたいしたことない反面、なまじ原始的な生物のせいか生命力と再生力が異様に強く、頭側と尻尾側に胴体を二分しても平気でしばらく生きている(さすがにプラナリアの如く増えはしませんが)タフさも、狩猟士から嫌われる一因ですね。

 そのクセ、素材としては皮が衣類などに利用できるほか、独特の弾性を持つ背骨が様々な細工類に原料として重宝されるなど、それなり以上の利用価値があるのがまた始末が悪い点です。

 つまり「リヒザードの討伐&その素材入手」は、「一定の需要と利益が見込める(むしろ必須な)ものの、真っ当な感性の狩猟士ならあまりやりたくないお仕事クエスト」……と言うワケです。


 「“汚れ仕事”とはよく言ったものだ」

 協会派遣の監督官みとどけにんとして、3人に同行したリーヴが、少し離れた位置から大騒ぎする教え子たちを眺めつつ呟きます。

 「ま、不愉快だけど必要という点では、下水掃除ドブさらいなんかと似てるからな」

 「その通りですね。しかし、此処からがあの子らとって本番でありましょう」

 ──どうやら独白ではなく、“連れ”がいたようです。

 「娘と義息(?)の属する徒党とは言え、わざわざこんなトコロまで来られるとは、少々過保護ではないかな?」

 やれやれと肩をすくめながら、リーヴが“連れ”──マクドゥガルとランに向かってそう言いますが、「お前が言うな!」と思うのはわたくしだけではないでしょう。

 「いやいやいや、別にヴェスパの狩りの様子を見たいとかってのはオマケだから。俺達だってちゃんと用があって、こんな湿地洞窟スワンプケイブに来てるんだって」

 裏を返せば、娘の参観も多少は理由である、と。

 「協会から直々に“はぐれ”の捜索と排除依頼されているのです」

 マックの言葉を補足するように、ランが真意を告げます。

 「! こんなトコロに“はぐれ”が? モノは何なのだろうか?」

 幾分弛緩しがちだったリーヴの表情が一瞬にして引き締まります。

 狩猟士業界における“はぐれ”とは、本来の居住地域ではないはずの場所に出現する巨獣や怪獣の総称です。

 多くの場合は、縄張り争いに負けて追い出された個体ですから、強さとしては“同族の中では”それほどたいしたものではないうえ、負傷などでさらに能力が低下していることが多いのですが……。

 反面、「そんな場所にいるはずのない種」であり、本来は上級の討伐対象となるような代物に、新米や下級になりたての狩猟士が遭遇したら危険極まりありません。

 また、通常の依頼であれば十分太刀打ちできる能力のある狩猟士でも、別のクエストを達成するためそちら向けに装備を換えたり、意識を逸らしているところを襲われると、一転ピンチになるでしょう。

 このため、狩猟士協会は“はぐれ”の情報をキャッチした場合、速やかに排除することを優先する傾向にあります。

 問題は、今回の“はぐれ”の種類ですが……。


 「水妖守ギガントアショトル。教官殿せんせいはかつて上級だった聞き及んでおりますが、狩った経験はおありですかの?」

 「ギガアシか……一応何度かあるが、あまり得手ではないな」

 ギガントアショトルは水陸種(いわゆる両生類)に属する巨獣で、ランク60以上の上級狩猟士の討伐対象となる獲物です。

 その風貌はひとことで言えば“巨大サンショウウオ”です。あるいは、“全長20メートル強の青いウーパールーパー”と形容する方が正確かもしれません。

 後者のたとえだと、テレビなどのイメージでユーモラスに感じるかもしれませんが、ブロントサウルス級の巨体を持つ肉食獣が敵意をもって迫って来ると聞けば、某恐竜映画などからその脅威度は推し量れるのではないでしょうか。

 特にその体表はぬらりとした粘液に覆われていてかつ弾力性に富むため、ハンマーやバインドウィップなどの打撃武器を得意とするリーヴとの相性が良くありません。

 幸いそれほど動きの素早い相手ではないため、距離を保ってロングボウを撃ち続ければ何とかなるのですが、このギガントアショトルもリヒザードに負けず劣らず生命力が旺盛なので、10発や20発どころかまともに100発矢を当ててもピンピンしているのが辛いところ。単独では、それなりの腕利きでも時間切れで失敗になる可能性が低くはないのです。

 「幸い、俺の得物は片手剣だからな。しかも対水陸種を意識して熱属性で切れ味の良いヤツを持って来たし」

 達人級の武器ですから、今のリーヴの手元にある諸々の装備とは比較にならないほど高性能なのは間違いないでしょう。

 「それにしても、ギガアシと言えば、もっとずっと南西の方に棲息する巨獣では?」

 もちろん、本来の棲息域から外れているからこそ“はぐれ”なのですが、それにしたって、このルノワガルデ盆地内ではまず見られない生物であることは間違いありません。わざわざ国境線である外縁部の山地を越えて来たのでしょうか。

 「疑問は尽きませぬが、わらわたち現場の狩猟士としては眼前の獲物を狩るのが使命──来ます!」


  * * *  


 人間の文明ちえとちからってヤツは偉大チートだ。

 素手の状態であれば野良猫と本気でケンカしたら負けかねない程度の常人であっても、武器を持ち、防具よろいを纏い、そしてそれらの扱いに習熟しさえすれば、山猫は愚か虎や獅子にだって安定して勝てるようなる。

 そして、この世界の狩猟士は、さらにその数段上の領域に達することも可能だ。

 ──というか、普通に考えて、10メートルを超す巨獣いきもの相手に一対一タイマンはって勝てるという時点で、だいぶ人間辞めてる気もするが、そこは「このせかいのぶき、しゅごい!」ということで納得して欲しい。

 で。

 そんな狩猟士の中でもさらにイカレた存在が“達人アデプト級”だ。

 私は双葉時代には残念ながら知り合いにアデプトはおらず、ネットにアップされた動画を観た程度だが、それでもその非常識っぷりはわかってるつもりだったが……甘かった。

 今、目の前で戦うふたり──マックさんとランさんをナマで見てれば、超級オーバーマスターだったなんて、とても恥ずかしくて名乗れないと、素直に脱帽したくなってくる。


 ギガントアショトルという巨獣は、その丸っこい頭部といい、つぶらな瞳といい、のたくたとした(ように見える)動きといい、遠目に見るぶんには、ユーモラスな生物に思えなくもないんだが……。

 いざ近づいてみると、まずその大きさ(全長20プロト強、背中までの高さも5プロト以上)に驚かされ、口の大きさとその中に並んだ凶悪な歯並びにビビらされ、ついでにヌラヌラした粘膜に覆われた皮膚に気味悪がらされるのが、初めて遭遇した人間のお約束だ。

 さらに言えば、水陸種らしく普段の動き自体は確かに機敏とは言えないものの、かといって格別に鈍足というわけでもない。むしろ、追い詰められたり、餌となる獲物を追う際は、なかなかのダッシュ力とスタミナを見せるくらいだ。

 そして巨体に応じた膂力も持っているし、そもそもがその体躯(と重量)自体が、人も含めた周囲の生物にとっては充分過ぎるくらいに脅威だ。

 なにげなく左右に振られている長さ5プロトあまりの尻尾の先端がかすっただけで、並みの人間なら絶命しかねないし、完全武装した狩猟士でも決して軽くないダメージを負う。カエルの手を形状はそのままに直径2プロトあまりに拡大したような前足にまともに踏みつけられれば、マスタークラス御用達の頑丈な重装鎧も1分と持たないだろう。

 おまけに、この巨獣の表皮は独特の粘膜に覆われているため、打撃武器は元より切断系武器もすぐに切れ味が落ちて、ダメージの通りが悪くなる……はずなんだが。


 「ラン、上からいくぞ!」

 「承知致しました」

 水妖守ギガントアショトルの横腹に、両手に一本ずつ持った片手剣をいともたやすく突き刺し、それを手掛かりに、腹ばいでも5プロトを越える高さの巨獣の背にあっさり登っちまうマックさんも大概だが……。

 鉤縄らしき道具を、ギガアシではなく、天井から垂れ下がる形に突き出た鍾乳石に絡め、それを手繰りながら壁面の岩を数回蹴って一気に天井近くまで跳び、そのまま旦那マックさんのすぐそばに降り立つランさんは度胸とかバランス感覚とか色々ヤバい。

 この湿地洞窟は、かなり天井が高く7、8プロト近くあるとは言え、ギガアシが思い切り暴れば背中が天井にブツかることも十分考えられる。そうなったら上に載ってるおふたりはペシャンコだ。

 それが予想できないはずもなかろうに……。

 いや、そうなる前に、あのふたりならあっさり飛び降りるか。達人級の危機回避能力は伊達じゃないし。

 そして、圧殺される危険を度外視するなら、確かにあの位置取りは最良だ。

 バフズ系やボアズ系みたいな蹄獣種ほどじゃないが、確かにギガントアショトルにとっても、首のすぐ後ろの胴体部には、身体の構造上前足も尻尾も届かないから、攻撃手段は限られる。すなわち、一方的に攻撃し放題だということを意味するからな。

 「ほれほれほれぇーーー!」ザクザクザクザクッ……

 「ホホホ、この距離からなら、存分に撃ち抜けますわえ」ブシュッ! ズシュっ!!

 案の定、おふたりはボーナスタイムとばかりに、足下の巨獣に好き放題に(そして的確に)攻撃を叩き込んでいる。

 無論、普通なら、あのヌルヌル滑る粘液塗れの水陸種の上に立つ……ばかりでなく、さらに全力で攻撃するなんてのは、不可能ではなくとも著しく困難なはずなんだが……。


(ソレができちゃうのが、達人アデプトの達人たる所以ゆえんなんだよなぁ)

 思わず、狩猟士リーヴではなくプレイヤー双葉としての感慨が脳裏に湧いてくる。


 アレは断じてバグとか不正チートじゃない。鍛え上げた挙句の純然たる身体能力と技能の結果だというのだから恐れ入る。


 残された数少ない反撃手段として、ギガントアショトルがゴロンとひっくり返ろうとするが、それは悪手だ。


 「そうクるのを待ってたぜぃ!」

 「自ら腹を晒すとは、愚かな」

 言うまでもなく、さっさと避難していたご夫妻を圧し潰すことは能わず、それどころか柔らかい腹部じゃくてんをさらすだけの結果となる。

 結果、数分後。

 ふつうはランク80前後の人間が3、4人組んだうえで半刻ぐらいかけてようやく倒せる(協会の規定ではランク60以上で挑戦権はあるが、その程度で挑むのは無謀だ)はずの巨獣モノを、マック&ランさんはいともたやすく討伐してしまった。

 さりげないドヤ顔を見るに、この夫婦、おそらくは娘(とその仲間)の前で、“イイところ”を見せたかったんだろうが……。


 「こ、コレが父上と母上の実力ほんき……!」

 「あ、達人級アデプト狩猟士はヤバいとは聞いていてましたけど、自分の目で見ると実感しますね」

 「リーヴさん、やっぱり上級狩猟士って、みんなあんなスゴい立ち回りができるものなの? ていうか、あんなことができないと上級になれないの!?」

 徒党「アルバトロス」の3人は感心を通り越して軽くヒいている。


 「安心しろ。私だって無理だ。というか、あんな無茶、真似したら死ぬから、絶対真似しないように」

 「フリじゃないからな」と心の中で付け加えるが、幸い3人とも大きく頷いているので、下手な真似ことはしないだろう。

 (元)師匠格として、教え子たちの聞き分けの良さにひと安心だ。


 「──あれぇ、何で頑張はりきって強敵を斃した俺達が、さりげなくディスられてるんだ?」

 「うむ、解せませぬ」

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