第4話
両親の馴れ初めを話したら自分と妻の馴れ初めも話したい気分になる。
結婚に至ったのはあれは25歳の時だ。
スキーも達者で大学の頃は毎年バイトで冬は雪山で過ごすくらいスキーが好きだった。
ちなみに親父ギャグではない。
親父の会社の後継者として皆から“若社長”なんて呼ばれ方をした俺は、
会社のスキーツアーの添乗員としてほぼスキー目的で同行することになった。
そのバスに妻が参加し乗っていた。
妻は男女のグループでツアーに参加していて、
すごく美人だなぁと思いながらも
ツアー中は一言も話すことすらなく顔だけ見ただけでツアーは終わった。
あの子…かわいかったなぁ…
名残惜しかった。
それからしばらくして、
繁華街の交差点の信号待ちをしていると向かい側の信号待ち人の中に知ってる顔が在った。
信号が青に変わると、
人混み涼しそうな白いワンピースからすらりと長く白い手足がなんとも夏の繁華街の日差しに映えて目立って見えた。
向こうはこちらに気付いていない様だ。
声をかけなければ…
「おぉ!わかる?」
少し大きめの声で声を掛けた。
「」…案の定無言が返る。
「あのこないだの太陽観光のスキーツアーの…」
必死で社名を出して思い出してもらえるようにさらにしがみつく。
「グループで参加されてましたよね?僕もその観光会社の者として参加してたんですよ!」
歩きながら横にピタッと付きながら最後にイチかバチか…
「番号聞いてもいいですか?」
ようやく白く長い足がピタッと止まった。
「あー!あのツアーの。
覚えてくれてたんですね。
番号は別に大丈夫ですけど…」
肩までの綺麗なセミロングヘアーが爽やかな夏風に揺れる。
シャンプーのいい匂いがしていた。
これを逃すともうこれ以上の人とは絶対に二度と知り合いにさえもなれないだろうなと思った。
とっさに、
「今からお茶でも行きませんか?」と大胆に唐突に御誘いをしたら「ちょうど喉が渇いてるしいいですね」とニコッと笑って誘いについてきてくれた。
あれ?なんか簡単だな。
いつもよりちょっと高めの雰囲気のイイ大人な喫茶店で、
ツアーの時の話やお互いどこに住んでるかとか当たり前の普通の会話を一時間程楽しんだ。
「初めて話した人と思えんは~」
なんて言ったら「私もそう思う!」なんてキャッチボールをしてくれてすっかり舞い上がった楽しい時間になった。
ツンとした非の打ち所の無い端正な顔立ちのわりに、
ケラケラ笑って出されたサンドイッチとパフェをしっかりペロッと食べてしまう様な気を遣わない気さくな性格も素敵な子だなぁと思った。
それから、
あの手この手でアプローチを繰り返し運命の再会の一年後に俺はめでたく結婚した。
人生で一番の甘い時間だったとも言える。
体重は妻の作る旨い大盛りの朝御飯のせいで10キロ増加、
幸せ肥りというものも経験し、
翌年には長女、
その翌年にはまた女の子が生まれ四人家族になった。
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